再編だけではなく、分割も

先週19日、日経金融シンポジウムにおいて、地域銀行の再編について、いつもの持論を展開しました。

地域銀行の持株会社形式での統合や合併は、異文化の衝突による無駄な時間とエネルギーで多大な機会収益の損失、それに加えて合併のためだけのコストが大きく、これらを統合合併によるスケールメリットで回収することは、至難の技です。

AIフィンテックの直撃を受けるトランザクションバンキング (典型的なプロダクトアウト) から顧客本位の持続可能なリレバン (ヒトの仕事です) へのスピーディーな大転換が求められる地域銀行にとって、無駄な時間とコストの浪費が容認されるはずはありません。

さらに統合によって地域銀行の基本である顧客接点の稀薄化につながるのではとの懸念が沸いてきます。

結局のところ、資本不足でリスクテイク余力のなくなった地域銀行の「救済」か、大が小を丸呑みするようなパターン以外には大義があるとは思えません。対等の統合合併というのは、非常に厄介というのがワタシの考えです。

顧客接点をきちんと維持し、資本を地元のために活用 (地元のためにリスクテイク) することを担保しつつ、かつスケールメリットを追求しようとすれば、バックヤードを中心に大胆な業務提携・連携を行うことが正解です。

実際、持株会社形式の経営統合 (対等と称する) に踏み切った地域銀行グループの施策を見ると、わざわざ資本を一緒にしてまで行うようなものは見当たらず、業務提携や連携で十分に対応可能なものばかりです。

その一方で、千葉銀行と武蔵野銀行の包括業務提携 (CMA) は着実に成果を積み上げています。

さらに言うと、顧客とのリレーションをより深めようとすれば、地域銀行という規模は大き過ぎるのかもしれません。

地域金融機関の目指すべきは、「ダウンサイジングとアライアンス」というのが正しい選択だと考えています。

先週の日経金融シンポジウムの鼎談 (横浜銀行の川村頭取と日経 玉木経済部次長) でも、地方銀行の組織の中でのミニバンク(県よりも狭いエリアをカバー) についての議論になったことは、聴衆の方から見ると予想外の展開だったのではないでしょうか。

今後は合併統合だけではなく、持株会社による金融グループが解体されるようなケースが出てくると思います。

とりわけ、かつて資本不足を克服するために統合を行ったグループの場合には、危機を乗り越えた段階で分割することも、今後は1つの選択肢として俎上に上がるのではないかと考えます。

持株会社の上場を廃止し、子銀行ごとのデューデリを行なって、それぞれの子銀行を再上場という流れも、夢物語ではないかもしれません。


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする