金融仲介の共通KPI

地域金融機関が真の意味で地元顧客のために汗を流しているか、表面を繕っているだけか、その違いを数値でハッキリさせることをいつも考えています。

イベント、箱物の組織づくり、中身がない外部連携、美辞麗句の作文で塗り固められた偽物と、本物の組織的継続的な顧客本位のビジネスモデルの地域金融機関との差は、地元事業者や地元経済へのリスクテイクと、そのための資本の活用の部分にあるのではという議論を、昨日、盟友のYさんと行いました。

金融機関の自己資本比率は8%だから安全、といった規制資本の話ではなく、リスク資本の考え方の徹底です。

金融機関の活動にはリスクを伴うのですが、リスクを取らない限り、リターン(収益)にもつながらないことも事実です。

リスクテイクによるリターンの裏には損失の可能性があるのですが、将来の損失可能性の平均値だけを見ているだけでは十分とは言えません。

損失額の平均値(=予想損失額、EL) は期間収益 (→ 引当金)の中で吸収すべきものでしょうが、それを超えるような最大損失額 (一定の確率のもとで = VaR)への備えが必要です。

この VaR と EL の差が「非予想損失額」 (= UL) なのですが、これは資本でカバーすべきものです。

地域金融機関が抱えるさまざまなリスクに関わる UL に対し、自己資本をどのように配布し、リスクテイクに基づくリターンの最大化を図る、かつそれが顧客本位の視点にも合致している、というのが地域金融機関の経営だと思っています。

昨今、話題になるリスク・アペタイト・フレームワーク (RAP) の土台にあるものはリスク資本の適正配布です。

UL はリスクテイクの証です。

地元企業、地元経済のためにリスクテイクを行なっているかどうかは、地元における信用リスクに関わるUL値を見れば明らかです。

ULこそ、顧客本位のビジネスモデルの大前提である地域コミットメントの共通 KPI にすべきと考えます。

地元における企業倒産や廃業の事業者数と、地元における信用リスクのULの変化率との比較で、金融機関の地元経済へのコミットメントの度合いを計測することができるでしょう。

地元の定義は、地方創生に責任を持てる地域に限定すべきです。

近々、金融仲介の共通KPIの議論が始まるものと予想されますが、その議論の Leading Indicator となるのは金融機能強化法だと思います。

ワタシは金融庁において、金融機能強化法の公的資金の審査を行っています。

金融機能強化法の趣旨が、国民の税金を使って地域金融機関が地域事業者の再生や地域経済の活性化を実現するところにあるわけですから、当然ながら、当該金融機関の地元における信用リスクの ULをしっかり見ているのです。


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