追うものは強し、ただしリレバン

地域金融機関の仕事 (コンサル → 社外役員) を始めてから20年以上が経過します。

それまでの都市銀行や外銀での市場部門 (有価証券運用、デリバティブズなど) での経験を軸に、ALMやリスク管理のコンサルから手がけ、徐々に経営の根幹に入って行きました。

そして何と言っても14年前に地方銀行の社外監査役として銀行の内部に入ったことが、地域金融コンサルの視野を大きく広げるものとなりました。ガバナンスの芽がやっと出てきたかどうかという時代に、海のものとも山のものともつかない人間に声をかけてくださった頭取さんには感謝の念に堪えません。

数多くの地域金融機関のコンサルティングを行う中で、「追う立ち位置」の方が「追われる立ち位置」よりも有利ではないか、との思いを持っています。

後者はトップ地銀であり、その地元事業者の融資先数や給与振込口座の圧倒的なシェアには驚かされます。地方公共団体からの情報量も多く、トップ地銀は間違いなく他の金融機関よりもはるかに優位なポジションにあります。

ところがこれらのリソースを十分に生かすことなく、現状にあぐらをかき、人口減やマイナス金利という環境変化に竦んでいるだけでは、その優位性は消滅します。

追う立ち位置の金融機関の多くはトップ地銀と同じことをやっています。同じことをやれば、規模でも情報量でも劣る方が負けるのは明らかであり、その経営姿勢が現在多くの二番手以下の地域金融機関の苦境を招いているのです。

トップ地銀のモノマネしかできない二番手以下の金融機関の経営者は即退陣すべきです。

さて、

追う立ち位置にある二番手以下の金融機関の道は、フルライン戦略ではなく、「尖った特化戦略」です。

そもそも地域金融機関の業務には採算性が低くても社会的にやらねばならないものが少なくないのですが、これらはトップ地銀に押しつければ良いのです (言葉は適切ではありませんが) 。

このような業務を削ぎ落とした上で、やるべき業務を尖らせば良いのです。

かつての事例を見ると、二番手以下の金融機関の特化戦略では、なぜか個人金融 (それもプロダクトアウト) の分野に傾斜していました。

スルガ銀行はその典型ですし、荘内銀行もそうでした。

業務を絞り込むのは良いのですが、プロダクトアウトである限り、果てしないボリューム追求と抜本的なコストダウンが不可避です。

AIフィンテックの台頭と異業種の進出の煽りを受けるのはこの分野であり、この特化作戦を成功に導くことは難しいと判断せざるを得ません。

二番手以下の金融機関の戦略で成果が出始めているのは、中小企業取引とその関連取引にすべてのリソースを投入したケースです。手法はトラバンのプロダクトアウトではなく、組織的継続的なリレバンです。

追う立ち位置の金融機関が、プロダクトアウトで尖っても怖くありませんが、組織的継続的リレバンに特化して磨きをかけていくと、トップ地銀にとって大変な脅威になるのです。


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする