合併よりもビジネスモデルの原点回帰

三島信用金庫(静岡県三島市)の平井理事長への日本経済新聞 (静岡版、6月5日) のインタビューを見て、(真の意味で) 協同組織金融機関の原点回帰を目指す信用金庫がまた一つ登場することに、大きな期待を持ちました。

信用金庫は規模が大きくなると地域銀行の悪いところばかりをモノマネするところが多く、そんなことならば軽減税率の対象外にするぐらいの策を講じるべきと考えるワタシとしては、三島信用金庫の新しい取り組みに対し、陰ながらエールを送っています。

「2020年度を最終年度とする新中計の狙いについては『地域経済に寄り添うという信金の基本に立ち返らなければ、存在感が薄くなるばかりだ』と述べ、縮小する市場で顧客との関係性を改めて深める考えを示した。
新中計では人事評価は顧客との接点を軸にしたものに改め、地域への貢献度を高めていく。この点に関しては『数値目標をただ消化するのはむしろ楽だ。お客様の立場に立って真剣に考え、悩まなくてはいけない』と語った。
具体的には顧客との接点をどれだけ充実させたかというプロセスを評価するように変えた。顧客との相談記録や事業性評価シートの作成件数や内容、それらに基づいて実行した融資の件数などを見る。従来は主に貸出残高や預金残高といった実績を重視していた。
管理職の評価指標でも人材育成を重視。営業面の指標向上だけでなく、後進育成に力点を置く。」
(日本経済新聞 静岡版 6月5日)

昨今、大手の信用金庫でこのような大転換 (業績評価や人事考課を見直しも含む) をしたのは、ワタシの知る限り、京都信用金庫、浜松信用金庫の2つです。

「ボリューム目標を外すと収益が激減する」との周囲の声をあざ笑うかのように、両金庫とも業績は堅調で、顧客の評判も競合金融機関と比べすこぶる良いように感じます。

金融機関の独りよがりのモノ売りではなく、顧客ニーズに合致することに注力しているから、当然といえば当然のことです。

静岡県の西部、中部での合併劇を見て、東部での信用金庫の合併を期待する無責任な外野筋は肩透かしを食らっているかもしれませんが (笑い)、合併云々よりも、ビジネスモデルの大転換、そのための業績評価や人事考課の変革を優先させるところに、三島信用金庫の経営の質の高さを感じます。

さて、

三島信用金庫は、2006年に伊豆信用金庫 (本店は伊東市、かつての伊東信用金庫と下田信用金庫が合併) と合併しました。

記憶を呼び起こしますと、背景には伊豆半島の観光業が厳しい状況に陥っていたこと、さらにはそれを支えるべき地域銀行が方針転換し、小規模の信用金庫だけでは支えきれなくなったことがあったように思います。

つまり、スルガ銀行が個人金融に大きく舵を切ったことにともない、駿東・伊豆地区における事業者への金融仲介の図式が大きく変わったことが、同地区の信用金庫の合併へとつながったのではないでしょうか。

スルガ銀行問題との比較で、三島信用金庫の新しい動きを注視していくこととしましょう。


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