小規模銀行に合併の選択肢があるのか?

昨日の日経新聞の地銀PBRの記事について、追伸です。

改めてワースト13行 (PBR 0.29 以下) を見ると、すべて小規模の地域銀行です。

株式市場は地域銀行に対し、あくまでもプロダクトアウトのトラバンを前提として、コスト効率化のためのスケールメリットを求めると考えられます。

スケールメリットならば、銀行合併と行きたいところですが、合併のための費用は思いのほか大きく、小規模銀行の体力 / 収益力 (極めて厳しくなっている) で、果たしてこれを吸収できるものなのか、疑問に感じます。

メディアの報道も、さらには驚くことに合併予定の当事者たちも、合併後のシナジーをとうとうと語るものの、合併費用についての言及を聞いたことがありません。

数年分の当期利益が吹っ飛ぶような合併費用を覚悟しなければなりませんが、当事者たちはこれを容認しているのでしょうか。

両者の良い方を採用する対等の精神での合併 (良くある話です) というのが、一番合併コスト (時間も) がかかるというのは、過去の歴史が物語っています。

救済合併か、一方の銀行にすべてを片寄する合併ならばまだしも、小規模銀行に利害調整の塊のような対等の精神での合併を実現するだけの体力があるとは思えません。

利害調整型の対等合併は、シナジー効果が出るまでに、合併費用に押しつぶされてしまうのではないかと危惧します。

またそのシナジー効果とやらも、所詮は過去の延長線上のものであり、AIフィンテックの台頭により、近い将来、まったくコスト構造の違う世界となった時、この程度の効果はあっという間に雲散霧消するでしょう。

率直に言って、プロダクトアウトのトラバンモデルのままで、合併という選択をするには、もはや手遅れなのです。

それでは小規模銀行にとっての生き残り策は何なんでしょうか。

答えはいつも同じです。

まず、スケールメリットは徹底的なシェアードサービス。

そして、ビジネスモデルはリレバンです。


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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    一説によると目で見える看板掛け替え、広告諸々の費用だけで百億円以上のオーダーとか。ポスト争い、優秀な人材が統合推進委員会やらシステム統合やらにはり付けされることによる会計では捕捉できない逸失利益はいかほどでしょうか・・・

  2. Hさん より:

    営業店の現場においても、商品性・サービス内容の変更に伴う既存顧客への個別説明や、事務取扱・端末操作の変更に伴う研修受講等のために、本来は営業活動に充てていた時間が相応に削がれることになります。(更にはこれらの対応を求められる職員に対して、合併の大義が十分に伝わっていないと、現場のモチベーションが低下します)

    また、システム統合に向けた作業のために、新たなシステムの導入や開発は、かなり制限されてしまうのが一般的です。

    このような足枷のかかった状況を狙った競合他行の進攻を、一体どれだけ許してしまうのかについても、会計では捕捉できない逸失利益だと思います。

    (尤も、合併の大義が既存顧客にも十分に伝わっており、万全の支持と信頼を得ているのであれば、懸念するには及びませんが)

  3. 橋本卓典 より:

    Hさん、ご賢察な指摘、まったく同感です。我々は、見ているようで、大切なものを捕捉していないのです。もっともらしい言葉が先行し、「さてさて、果たしてどうかな?」という思考が止まってしまうのです。

  4. 新田信行 より:

    私は、第一勧業銀行とみずほ銀行におりましたので、数字に表せない合併の恐ろしさを実感しております。トップラインの減少、意思決定の遅れ、そして何よりも職員の心…。