実は、ワタシは今事務年度に入ってからの金融庁検査に関して、違和感を持っていました。
「厳しい収益状況にある地域金融機関が増えている」との警告とも言えるメッセージを出す一方で、喫緊の問題を抱えているとは思えない地域トップバンク (下記ではゾーン ③) を対象に、有価証券運用などの (いわば部分) 検査を悠長にやっていることのアンバランスが理解できませんでした。
数日前、福岡で行われた金融庁幹部の講演、
「地域金融機関の課題解決に向けた今事務年度の基本方針」
の内容を、講演を聴講した在九州の某地域銀行の方に教えてもらい、ワタシの違和感、懸念が払拭され、金融行政が本来のやるべきところに改めて照準を定めたと確信しました。
ワタシの印象は、「よかった、よかった」なのですが、講演を聞かれた方はどのように感じたのでしょうか。うかがってみたいものです。
さて、この講演では、
地域金融機関を3つのパターンに分けることで、金融行政の対応が明確に示されています。
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ゾーン ① :
対象→ コア業務純益 (投信解約益を除く) が大幅に低下し、収益が継続的に低迷している地域金融機関
施策→ 将来の健全性のための早め早めの経営改善を求める。見栄による経営状況に見合わない配当や有価証券含み損の先送りを問題視し、社外を含めた経営陣との対話によって注意を喚起する。
ゾーン ② :
対象→ 金融機能強化法で公的資金を導入している地域銀行
施策→ 法の趣旨に基づいたビジネスモデル (地域における金融仲介の円滑化、業況厳しい地元企業の経営改善支援や事業再生、地域経済社会へのコミットメント、地方創生) を遂行、金融機関の収益も時間軸を持って持続的に向上させるよう促す。
ゾーン ③ :
その他の地域金融機関。
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ゾーン ② については、3年ごとに経営計画が審査会 (ワタシは審査委員です) での承認が求められ、半年ごとに履行状況のモニタリングを受けることから、それなりの枠組みができ上がっています。実際に公的資金をバネにして地域企業、地域経済との共通価値の創造 (CSV) を進めている地域銀行も少なくありません。
問題はゾーン ① です。
昨年、一昨年と、ビジネスモデル検査ということでこのゾーンに入る地域銀行数行に対し、モニタリングが行われましたが、ワタシから見るとウヤムヤに終わったように感じます。金融行政サイドの対話能力不足と推察します。
リターンマッチで、ゾーン ① に金融行政の総力を挙げてしっかりと取り組んでもらいたいものです。
ゾーン ① の地域金融機関を覚醒させることは、地域活性化・地方創生にとって必要不可欠です。
覚醒できない金融機関に対しては、経営陣の総入替などの外科手術から逃げてはいけないと思います。
コメント
【信金信組には狭域の地域特性に合致した素晴らしい取り組みがある。ただし経営者次第】
まさに経営者次第を実感する事例を耳にしています。このケースは逆の意味での経営者次第です。優れた事業資産の活用を考えることなく、収益環境悪化に押しつぶされ逃げ切りを図るために合併を選ぶ経営者がいる、なんて考えたくもありませんが。
地方創生は文字通り地方です。地方と地域をささえる共同組織金融機関にもう少し目を配る必要を感じます。
金融当局の活躍を期待します。
寺岡さま、
「優れた事業資産の活用を考えることなく、収益環境悪化に押しつぶされ逃げ切りを図るために合併を選ぶ経営者がいる」
これって、十八銀行の経営者も該当しますね。
純資産1600億円で買収に応じる、かつ膨大な負ののれんの献上、これこそ経営統合ではなく、経営逃亡です。
でも、地元のお客さんがそれで良いといっているのなら、目くじらを立てる必要もないかもしれませんが。
地域顧客の金融リテラシーの低さが、地域金融機関のダメ経営者の生息を許してしまう例です。