部門別採算、把握していますか?

「地域銀行 X が、2020年3月までに全営業店の半数以上をリテール(個人向け金融)専門にする。」との新聞報道がありました。

「個人の資産運用の強化」(頭取談) とのことです。

〜行員の専門性を高め、投資信託や保険といった個人向け取引の提案力を強化する。超低金利で企業向け融資の稼ぐ力が細るなか、個人の資産運用に関するコンサルティング業務に力を入れ手数料収入の増加を目指す。(日本経済新聞 地方版)

おいおい、、、

顧客本位である限り、どのようなビジネスモデルを描くかは、経営者の判断なので、ワタシごときが口を挟む筋合いではありませんが、この銀行の貸出利回りは同業態比でかなり低く、事業性融資では収益を見込めないとの経営判断が背景にあるのだとしたら、ムムム、ツッコミたくなります。

そもそも、

中堅中小の地域金融機関の個人金融業務 (もちろん、預かり資産業務も含みます) が儲かっているとは、ワタシにはとても思えません。

投信や保険の手数料収入額は目に見えるのであたかも収益が上がっているように感じるのですが、そこにかかるコスト (主として人件費) は、どんぶり勘定です。

コストを部門別に振り分けると個人金融業務は赤字になるでしょう。

部門別採算 (経営の基本、当たり前のこと) を出せば容易にわかるのですが、収益を生み出しているのは、ALM部門だけ (それもいまや長期金利の低下で先細り) というのが実態ではないかと思われます。

この銀行の貸出利回りの低さから推察されるのは、プロダクトアウト型のトラバン融資しかやっていないのではないか、ということです。

だとすれば、経営資源を赤字業務 (個人金融分野) に傾斜配分するのではなく、伸びしろのある地道なリレバン型の中小零細企業 / 個人事業主との取引にシフトすべきではないでしょうか。

頭取のいう、個人の資産運用の強化は正解ではありませんね。

いつもながら余計なお節介ですが、黙っていられないもので、書いてしまいました。


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コメント

  1. 新田信行 より:

    自分の収益しか考えていないのに、お客様のためだと格好をつける二枚舌の性癖が、金融業界に蔓延しているように感じているのは、私だけでしょうか?