鎧兜を捨てよ

《九州・沖縄に本店を置く28信用金庫の2019年3月期決算は、6割にあたる16信金で最終利益が減少した。28信金合算の最終利益は前の期比16%減の95億円だった。貸出金残高は増加したものの、日銀のマイナス金利政策によって利回りは低水準。地方の人口減少という逆風も吹くなか、同じく苦境にあえいでいる地方銀行との顧客争奪戦に向け、各信金は業務効率化などを進める。》

8月10日の日本経済新聞電子版です。

ワタシの印象ですが、九州沖縄の信用金庫の取り組みはベタ (よく言えばオーソドックス)、地方銀行と同じであり、このままでは共倒れへの道をまっしぐらです。

あくまでもワタシの評価ですが、九州には日豊本線沿いの3つの第二地銀 (豊和、宮崎太陽、南日本) のような先進的取り組みを行なっているところがあるものの、信用金庫となると独自性のある尖った取り組みは見られません。

信用金庫や信用組合はバックヤードのシェアードサービス (← スケールメリットが効いてくる) の完成度が高く、地域の重複エリアが多くない限り、合併のメリットはありません。(救済は除く)

《日本経済新聞社のアンケートでは九州・沖縄の28信金のうち既に合併方針を発表した宮崎の2信金を除いて、他信金との合併が「視野に入る」との回答はなかった。》(同記事)

は十分予想されるものです。

それでは、

信用金庫はどうすれば良いのでしょうか。

原点に戻ることです。

金融機関である前に、協同組織の本来の姿に回帰することです。

そして「金融機関はかくあるべし」という古ぼけた鎧兜を捨て去ることです。

具体的にどうすればいいのか?、そんな事例はあるのか?

ほらほら、またモノマネ病ですか、先例踏襲病ですか。

それは地域を直視し、自らが考えることです。

さて、

以下は新潟県魚沼市に本店を構える塩沢信用組合 (預金積金325億円、貸出金164億円) のホームページにある小野澤一成理事長の挨拶文の抜粋です。

《2008年「リーマンショック」の年、当組合は、大変大きな赤字を処理した。地元の「新潟日報」には、県下最大の赤字と大見出しで報じられ、多くの方から、塩沢信組大丈夫かとお問い合わせをいただいた。理事長に就任した2008年6月の「通常総代会」で、不良債権問題と有価証券評価損の双子の赤字を処理して、膿を出し切りたいとお願いした。2009年3月決算は「4億56百万円」の大赤字となった。
 あれから10年、当時、自己資本額は、10億円、不良債権額は、20億円、今では、自己資本額が、20億円、不良債権額は、10億円と全く逆転し、健全性を示す指標は大幅に改善された。何よりも、10年連続の好決算を達成し、それを記念して、地元と組合員へ利益を還元することを決めた。》

小野澤さんの取り組みは様々なメディアで報道されていますが、その本質は金融機関の常識にこだわることなく、小回りをきかせて、協同組織の本来の姿を追求したものとワタシは思っています。地域の実情 (ご多聞に漏れず過疎化が進んでいます) を踏まえて、真の意味での顧客本位の施策を次々と打ち出したことが、成果につながったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 


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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    塩沢信組は小さいながらも「南魚沼を守り抜く」ことだけに経営資源を投下している地域金融機関のあるべき姿を体現されています。

    「小さいから地域金融機関が危ない」

    のではなくて、

    「衰退(速度感は別として)していく地域経済に対して、身の丈に合わない給与水準やモノ売り旧型ビジネスモデルを変えようとしないから金融機関が危ない」

    のです。

    ①地域のお困り事の解決に本気か?

    ②その地域において身の丈経営をしているか?

    この2点だけでも、大体、地域金融機関の経営を推し量ることができます。