本日、日本経済新聞 第一面に「統合地銀 預金保険料下げ 金融庁検討、再編を後押し 」との記事が掲載されました。
「金融庁は金融機関が経営破綻に備えて積み立てる預金保険について、経営体力に応じて保険料率に差をつける方向で検討に入った。」(同記事) ことについては、預金保険の本来の役割から当然のことです。
ところが、
「統合や合併で経営基盤を充実させる地銀は料率が下がる仕組みにして、再編を促す。政府は地銀の統合を認めやすくする特例法も整備する予定だ。地域経済の縮小で収益源が細る地銀の経営改革を後押しし、地域金融の維持を目指す。」(同記事)
となると、???
金融機関の健全性によって、料率に差をつける「可変保険料率」の導入により、動きの鈍い地域金融機関の経営者に経営改革を促すこと、これは絶対にやるべきです。
ただ、経営改革による経営基盤の安定のための方法は1つではありません。そして手順というものがあります。
まずはビジネスモデルの見直しによる自己改革、自力でできないのであれば外部人材の活用もあるでしょう (村社会にはアレルギーがあることは承知の上です)。
そして業務連携や提携などで、コスト削減とシナジー追求。
異文化の激突による時間とコスト (機会費用も含む) が大きく、ヒューマンアセット毀損のリスクも高い資本統合 (経営統合、合併) は、経営改革の“最終手段”です。
ワタシは救済的な色合いがない限り、資本統合はあり得ないと思っています。
本記事では、「可変利率の目的が再編を促すこと」と断言しているのですが、憶測記事なのでしょうか。だとすれば、ワタシには多いに違和感があります。
もし万が一、金融庁の意向がそうなのだとすれば、金融仲介のあり方検討会議などの場での議論が必要だと思います。
ワタシとしては、「可変料率で経営改革を促すべき。ただし、再編は経営改革の選択肢の1つであり、最終手段。」であることを主張し続けるつもりです。
コメント
多胡先生に共感いたします。
金融庁の参与や委員の中にも様々な意見をお持ちの方がいらっしゃるのは当然です。当局から発信される金融行政方針やその関連資料、各委員会・検討会議の議事要旨をみると、それぞれの考え方が両論併記されています。。
しかし、最後までよく読むと「合併統合は選択肢の一つとして否定はしないが、合併統合ありきの議論ではない」ことはよく理解できます。
ここ数年の、日経新聞の合併ありきの報道姿勢は、一方に偏りすぎているようで、ある意味、マスコミの陥りやすい罠や危険を感じています。
私も多胡先生のお考えと同じです。地域金融機関の中には、自金融機関の身を削ってでも、地元の中小企業のために金融仲介機能を発揮する先もあるかもしれませんし、それを願っています。預金保険料率の件については、金融庁の金融仲介の改善に向けた検討会議などで中身の濃い議論を戦わすことを期待します。
金融機関も、むやみな再編で地域に対して「当事者能力」を失うことを怖れていると思います。故に、どんなに煽っても救済しか再編はありません。
このようなことに身悶えして、戸惑う暇があるなら、当事者能力と地域に責任を持った金融機関として、みずからの意志で果断に変革すべきです。
分かっている地域金融機関の人間は決して少なくないと思っています。あとは心理的安全に基づく行動と実践です。