日経地方版に掲載される記事、「地域金融のいま」は各地の地域金融機関の動静をさぐる観点から、かかさず読んでいるのですが、記者の個性が出ます。
本日の中国版と九州沖縄版は対照的でした。
九州沖縄の視点は「手数料ビジネス」です。
タイトルは、「育たぬ手数料ビジネス 九州・沖縄21行中14行で減少」。
本日の同紙全国版には、フィデリティ証券が来月より投資信託の販売手数料を撤廃との記事がありましたが、ワタシは預かり資産業務が収益の柱になるとは思っていません。
個人顧客の資産形成の支援は重要である以上、地域シェアの高い地域金融機関は「儲からなくてもやらねばならない」業務なのです。地域シェアが低いのであれば捨てるのもやむなしです。昨今の地域トップ地銀と大手証券会社との連携や、SBIと地域銀行に対する、預かり資産業務バックオフィースの支援業務はこの流れを踏まえたものと考えられます。
~各行は後継者不足に悩む地元企業への事業承継支援やM&A支援、高齢者向けの遺言信託といった次の手数料ビジネスの道を探る。金利ビジネスの落ち込みを補う柱にどれだけ早く育てられるかは、各行の力の入れ方と工夫にかかっている。(本文より)
とありますが、そもそも事業承継を手数料ビジネスと位置づけている地域銀行の姿勢には違和感を持ちます。それを当たり前のように報道する方も同様です。こういう意識だから、相応の手数料がとれない小規模企業や個人事業主の廃業問題は放置されたままなのです。こちらの廃業件数の方がはるかに多いのに。
一方、中国版はリレーションシップバンキングにフォーカスしています。
リレーションシップバンキングは属人的でイベント的な仮面リレバンを取り上げることは簡単ですが、真の意味での組織的継続的なリレバンを取り上げることは、相当の取材力が要求されると思います。
~ 融資や本業支援によって中小・零細企業の経営を支える「リレーションシップバンキング(地域密着型金融)」。徹底したリレバンを手掛ける地域金融機関や組織に対して、金融庁関係者も一目を置く。低金利や人口減少で金融機関を取り巻く環境は厳しさを増すが、同じくらい中小・零細の経営も厳しい。草の根の金融仲介で地場企業を支える現場を追った。(同記事)
本日は、融資即断「最後のとりで」ということで広島市信用組合 (シシンヨー) を取り上げています。
シシンヨーの取り組みは多くのメディアが取り上げていますが、ワタシも十年来のシシンヨー・ウォッチャーです。(当ブログ、2018年9月3日「山本さんのこと」、同9月17日「山本さんのTV番組から」をご高覧ください。)
ワタシは顧客との接点の深さが信用リスクを引き下げ、融資判断のスピードがリターンを上げていると思っています。
~20年3月期決算では、本業のもうけを示すコア業務純益95億円と、18期連続で増益となる見込みだ。山本理事長は「地元で集めたお金を地元で回すのが地域金融の役割。リレバンがもうからんとは言わせん」(山本理事長)と話す。リスクを取る融資に特化したモデルが、苦境で揺らぐ地域金融に大きなヒントを与えている。(本文より)
手数料ビジネスを否定はしませんが、まずはリレバンの深化ではないでょうか。
中国版によれば「中国地方発でリレーションシップバンキングを手掛ける金融機関や組織を3回連載で取り上げる」とのことですが、第2回、第3回でどの金融機関が登場するのか。
興味津々です。