資金の出しっ放しは無責任

12月17日のブログ「七尾カルテット」に長野の銀行員さんからコメントをもらいました。

~ のと共栄信用金庫さん、素晴らしい取り組みですね。ぼくも創業後の伴走支援が重要であると考えます。巷では創業・開業資金の取り扱い件数ばかりフォーカスされていますが、重要なのは創業後のフォローアップなんです。それは創業後に起こる事象は事業者様にとってすべて初めての事であり、金融のプロの力が必要となるからです。創業後、創業計画と比較し、トップラインが減少して推移した場合は修正計画の策定(原因究明、販路拡大策、経費圧縮策等)、反面、増加して推移した場合においても上り坂の資金を要します(創業後、間もない事業者様の財務状況は脆弱で当然です)。

ブログの本文でも強調したのですが、キーワードは

「創業後の伴走支援」

です。

さて、

神戸大学 家森教授他による「創業支援のための信用保証制度の利用の現状と課題 ~ 愛知県信用保証協会アンケート調査の結果報告」(2018年12月5日) は、金融機関による創業後の伴走支援の必要性をあぶり出しています。

アンケートによれば、創業者の 60%は創業後に資金繰りに窮しているのですが、そのタイミングを見ると、

半年以内→18.7%

半年超~1 年以内→ 28.6%

1 年超~2 年以内→ 26.0%

2 年超~3 年以内→ 26.0%

3 年超~5 年以内→ 15.9%

5年超→ 7.4%

であり、とりわけ半年から 3年までの時期に窮地に陥っていることがわかります。

どうやって凌いだか?という問いに対しては、以下が回答です。

① 自分や家族の資金を追加投入 →51.0%

② 販売拡大の努力 →46.0%

③ 経費の削減、事業の縮小 →35.1%

④ 金融機関からの信用保証付きの借入 →29.1%

⑤ 日本政策金融公庫からの借入 →15.9%

⑥ 金融機関からの信用保証の付かない借入 →10.9%

販路拡大のような本業支援や、金融機関による資金繰り支援が十分に行われていないことがよくわかります。

創業資金で非常に高いシェアを持つ某金融機関は、創業後の資金対応や本業支援の取り組みが脆弱なことは残念です。巷間、「資金の出しっ放し」と揶揄される所以です。

創業においても、本業支援と資金繰り支援による伴走型の金融機関や信用保証協会などの姿勢こそが、真に求められています。

七尾カルテットの成功の要因はそのあたりにあるように思います。

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コメント

  1. 八代恭一郎 より:

    伴走型、流行っていますが、大いに違和感あります。
    大辞林によれば、伴走とは「マラソンなどで、競技者のそばについて走ること」とされており、“きちんと走れるだろう”競技者をオブジェクトとした行為を伴走というようです。
    創業事業者や経営改善が必要な事業者が、すべてきちんと走れるわけではありません。こと小さめの中小企業であれば、走らなくても儲かるようなからくりがあったりすると、そもそも走る気がなかったり、走らなくてはならないのに、長年のお粗末なオペレーションがたたって、走れないことも少なくありません。金融排除ができる地域金融機関であれば、端から伴走の対象としないでしょうが、不本意ながら資金支援等を強いられる金融包摂の地域金融機関であれば、このような事業者から伴走ではなく、代走を期待されるものです。
    それを伴走型の資金繰り支援や本業支援として、金融包摂の地域金融機関が受けることが、顧客本位といえますか?
    “優越的地位もないまま営業を強いられ、事務もきちんとルール化されていない他業種の代走なんか、自信もなければ、なるべくなら避けたいのが、銀行員です。金融庁が重視するという「コスト・リターンのバランス」も悪いですし。
    走れない取引先に、あなたは走れないと本音を語るのは営業上クレバーではないでしょう。だからといって、期待された代走型支援ができない・やりたくないことをはぐらかすために、ある程度は走れる事業者を前提として、自行でやっている支援を伴走型支援などと称することはいかがなものかと思いますが。

  2. 橋本卓典 より:

    融通無碍。相手の状況に応じていかようにも走り方を変えるということかと思います。併走、追走、けん引、場合によっては、八代さんご指摘の代走、さらには敢えて「見えないような距離」で走ることも。

    問題は、パターン化された型だけで満足せず、融通無碍な走り方を可能にすることと、それを成り立たせる収益モデルを経営が用意することです。

    融通無碍と言われて困ってしまう方には、「結局、顧客のお役に立っているのかどうか」と申し上げます。パターンをこなしても、お役に立っていなければ、役立たずということです。経営の仕事は「お役に立つ」ことが収益化につながるビジネスモデルを組み立てることです。

  3. 長川康一 より:

    のと共栄信金さんが創業後のフォローアップを徹底しているのは、貸し手責任そして貸金回収という金融業本来活動の徹底と思います。
    プロダクトアウトの金融機関ではこれが徹底されないはずです。
    4・5年前に比べ創業融資の件数が大きく増加しています。
    現状の日本社会においてなぜこんなに創業者が増えているのか若干不思議に思っています。
    自治体が事業所数の減少歯止めを狙い、創業制度を立ち上げ広報の積極的展開とそれに呼応した金融機関の支援展開により創業融資が増加していると思います。
    ただ今、創業者を考える人は「創業ありき」の人が多いのではないか、まるで就職する会社を探すように、資金さえあればいろいろできると思い込んでいる人が。
    しかしこうした創業者と実績だけ考える金融機関の組み合わせは最悪な結果が想像されます。
    創業者も支援に取組む金融機関もまず事業見通しを真剣に時間をかけて考えるべきと思います。
    特に金融機関は不幸な創業者を生まない為にも「貸すも親切・貸さぬも親切」を肝に銘じて取り組むべきです。

  4. 田舎者の信金マン より:

    当庫の経営理念の中には
    地域、お客様に対し
    心から奉仕することを掲げています。

    心から奉仕するとは、深く重みのある言葉と考えています。
    尊敬する上司からは、お客様の人生を背負うこと、お客様の人生に想いを馳せることだと教えられ、金融機関のできる事、できない事、やるべき事、やってはならない事を考える日々です。

    皆さまのコメント、それぞれに 想いを感じます。