地域の現場発、長期化するコロナ不況への対策

本日付日本経済新聞、中山淳史コメンテーターの「構造転換促すプランBを」の一節です。

~政府は現在、リーマン・ショック後の56兆8千億円を上回る事業規模の経済対策を詰めている。中堅・中小を含め、企業の運転資金が著しく不足する「PL(損益計算書)ショック」への備えが狙いだ。(中略)だが、もう一つ心配があるとすれば「BS(貸借対照表)ショック」という事態だ。政府の仲介する低利・無利子融資や企業が結ぶ融資枠はいずれも企業には債務だ。危機が長期化すればするほど企業の返済余力は衰え、資金を貸した金融機関にも影響が及ぶ可能性がないとはいえない。~(同記事より)

実は先月中旬に、この中山論考と同じ趣旨、それも中小小規模事業者に的を絞った現場発の提言書が出ています。

3月19日にワタシのもとに伊藤貢作さんから届いた「コロナ次の一手のラフドラフト」というメモです。

伊藤貢作さんは北海道で中小小規模事業者の経営改善、事業再生、事業承継の最前線で日々戦っている人です。彼には1月18日の松江市での事業再生人シンポジウムにおいてパネリストとして登壇してもらいました。

ラフドラフトとのことですが、ご本人の許可をいただきましたので、伊藤さんの提言を紹介します。

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1  資金・融資面

(短期資金・緊急資金)

□ 最長3年後まで、書換対応可能な保証制度資金

□ 保証協会のみならず、日本公庫も保証行為をする。実行は市中金融機関

□ 公庫も保証行為をするのは、公庫の融資決定速度と手数の補填

□ 書換対応後は、金融機関・会社の合意で“取得時価格償還条件付き”のDESに転換も可能とする。

□ 会社再生後は理論的にはDES部分の株価は上がっている事になるけれど、企業側はDES転換時価格で負債に再転換または、オーナーもしくは自社株として買うことができる。

□ 保証付きにしないと推進力がないから保証付きで

□ 会社にとっては3年くらい短期資金を書換対応してくれる。しかも3年後に出口が見えなくても、DESに転換してくれる可能性があるので、自己資本の充実になる

□ 借りたいけど不安という人の心理的ハードルを下げられる。

□ 議決権付きにすれば、市中金融機関も一定の責任・発言権を保持できるし、リスクの共有もできる。

□ 議決権付与に抵抗がある場合は、配当優先株や黄金株でも良い。

□ デメリットは、DESの仕組みや資金制度の理解が複雑になるかもしれない。

DESが将来的に固定化、DES転換時の価格を保持できない場合は、中小企業疑似資本管理機構みたいのが買い上げて、超長期的に償却していく

□ デメリットは、出口時にDESじゃなくて負債に振り替えろ圧力が金融機関から会社にあった場合どうするのか?

□ 一定の数値をクリアーしていない企業の当該制度資金は、自動的にDESにしろ。みたく金融庁・財務局が強制できるか?(保証しているのだからやれ!)

□ 金利面はあまり安くなくても良いし、企業にはゼロ、金融機関には最低事務コストくらいの金利補填をするか?

2  税制面

(役員借入金・関係会社借入金の債務免除益の100%減免)

□ 期間限定でやる

□ コロナ不況による廃業意識の高まりを最大限防止する為に、事業再編・承継を推進させるのが目的

□ 一族会社や一族による会社への貸付金(実際には返済ができにくい役員借入金)

□ 会社切り出しや売却時には、買い手は承継しにくい借入金だが、オーナー一族が債務免除すると多額な免除益リスクがある

□ 免除益減免をすれば事業再編や地域の有力企業へのM&Aなどがしやすくなる

□ 受け皿会社は負の暖簾を承継することになるかもしれないけれど、地域経済基盤維持のお題目で目をつぶる

(有形固定資産売却益の100%減免)

□ 特別償却税制などで購入時に100%償却をした建設機械などもある。資金繰りの為に売却した有形固定資産の売却益への課税を100%減免する。

□ デメリット売り浴びせで、中古車価格が低下するかも

(事業積立保険解約時の雑収入への課税免除)

□ 資金繰りに利用するために解約した事業保険金への課税免除

□ 解除の嵐で保険会社がつぶれるか?

(消費税・社会保険料の分割納付制度の確立)

□ 延滞部分を含めた、消費税・社会保険の3年間程度の暫定リスケ

□ 納付の1年猶予、2年目・3年目の少額納付を認める

□ 分割納付はだれが計画書くの?適用基準は?というめんどくささあり

3  制度・機構面

(メーカーリース関係)

□ メーカーリースなどのリスケ制度の確立

□ 原則金融債務のように元金支払い免除や少額弁済を認める

□ メーカーのリスクが増大するので受け皿機構が必要か?

□ 事業計画や、適用基準をどうするのか?

□ 公的サービサーを作って受け皿にするか?

□ 観光バス会社には有効ではないか?

(特定業種余剰資産買取機構)

□ 観光バスなど、インバウンド減少によるバス売却など、コロナ不況の影響が厳しい

業種の特定資産の一定額での買取

□ 買い取ったのは、アフリカとかに売ればいい

(金融庁による事業価値算定式の設定)

□ コロナ不況長期化による地域企業再編(廃業を防ぐ)ための企業価値算定の速算式(金融庁版)を確立する

□ 業種別の割引コストや、便宜・速算的な不動産価値や在庫価値基準を設定する

(金融庁主体の中小企業版産業再生機構)

□ 支援協のような調整機関ではない

□ 政府資金による債権肩代わりや、株式取得を可能にする

□ 地域機関産業が特に観光などである場合、超長期による再生をはからないといけない場合もある

□ 場合によっては地域観光資源の受け皿であるホテルや観光関連企業の集約やM&Aによる経営合理化も必要になる

□ 国の有事なので、金融庁や財務局の命令で、腕利きの金融・士業・コンサルを集合させてことに当たる。

  • 金融庁・中企庁・保証協会・財務局・金融機関などの地域中小企業支援に絡む部署を時限的に一元化したような機構を作る。

□ 金融庁が関わらないと、短期的な時間軸で銀行をこっちに向かせられない。でも政策公庫、商工中金、保証協会、信金中金などの組織も指導化における組織

  • 地域資源再生集約化(強化)税制みたいのを設けて、オーナーの退職金や株式売却益、贈与税猶予を受けた株式の売却に伴う税金を優遇してでも、地域資源の再編促進を可能にして、倒産や地域産業衰退を最大限防止する

以上

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    新型コロナウイルスのもたらしたものは、これまでの「当たり前」の見直しです。

    例えば平時の需要が年55億枚(中国輸入44億枚、国内生産11億枚)の「使い捨てマスク」。恐らく今の需要は人口1人あたり1日1枚とすると、年200億~300億枚くらいだと思います。政府が「絶望的に使い捨てマスクは足りない」と真相を語らずに、「布マスクを全世帯配布」というからエイプリルフールだとからかわれるのです。「中国から数千万枚届いた」とか「ある企業が1億枚生産」とか、まったく無意味なニュースです。焼け石に水です。「使い捨て」という「当たり前」を捨てなければならないのです。

    同じく「インバウンドが当たり前」、「来店が当たり前」という感覚、「所有するのが当たり前」という感覚も「流動化」しなければならないかもしれません。サントリーも資生堂も除菌液を海外で生産するようですから「ウチはこれをつくるのが当たり前」ではなくて「対応力」「展開力」が問われると思いました。こうしたものはROEにはまったく反映されませんね。

    目先の「顧客本位」はもちろんですが、もっと先々も視野に入れて、動いていかないと「顧客本位」になっていない結果に至ってしまうかもしれません。

    あるフェーズに来たら、ホテルや旅館は、コロナ感染の無症状、軽症者の隔離宿泊として発想を変えるべきだなと思い始めています。