🚩実務経験のある研究者との出会い

昨今、地域金融・中小企業金融への注目度がアップ。いつになく地銀再編などの論考が多く発信されています。

興味を持つ人たちが増えるのは大変結構なのですが、地域金融や中小企業金融は数字に現れないところが多く、計数分析だけのアプローチでこれを論じることはミスリーディングな事態を招き、弊害も大きいと思っています。

そういう意味で、フィールドワーク重視、現場を熟知する学識者の存在は大変心強いものです。

このような要件を備えた学識者は圧倒的少数派なのですが、そういう強い味方の一人、水野浩児先生(追手門学院大学・経営学部長)の話を聞きました。

先生は地方銀行において十数年のキャリアを積んだのち、アカデミズムの世界に入った方です。上場企業の社外取締役、中小企業のアドバイザー、信用金庫の社外役員などを務めるかたわら、財務局のプロジェクトに参画したり、地域銀行や協同組織金融機関の従業員向けに事業性評価の研修も行っています。

「いまの大学生たちは個別の地域金融機関のことを驚くほど熟知しており、その情報がSNSでいともたやすく拡散されている」とのお話をうかがい、「捨てられる銀行」の実態は学生たちの間では完全に共有されていると感じました。

顧客本位の業務運営、リレバン、SDGsを高らかに謳っていても、「本物か、なんちゃってか」、その実態は学生たちの世界では丸裸にされているのです。

新卒採用に苦慮する地域金融機関が増加する一方で、学生が殺到する地域金融機関もあり、完全に二極化しています。

行政やメディアは表面ヅラでやり過ごすことができても、顧客は貸し手の優越的立場で押さえ込めても、学生の目は誤魔化せません。

このブログではレイジーバンクはヒューマンアセット崩壊で瓦解すると何度も書いていますが、水野先生のお話をうかがい、ますます現実味を帯びてきました。

昨日の日本経済新聞にストレステストについての説明がありました。 ~経済状況が悪化したり、市場で不測の事態が生じたりしても銀行が健全性...

23日のブログで紹介した動画には「XP信用金庫」が登場しますが、この信用金庫は大学生の中でもトップクラスの人気で狭き門なのだそうです。さすが学生たちは良く見ていますね。

昨年12月18日に47ニュース、Yahooニュースで発信した「地銀再編」に関する多胡の話が動画になりました。 ご高覧ください。 ...

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    債権研究が専門の水野先生によれば、債権とは債務者の良き行動変容を伴ってこそ、良質な債権になるとのこと。逆に見れば、債務者の行動変容を伴えない取引は、自らの債権を貶め、高リスクにさらしているともいえますね。

    「事業性評価で、難しいところに貸しました。頑張りました」

    で終わってはならず、債務者のやる気を引き出したり、喚起したり、応援して、行動を変える。ここまでやって、始めてリレバンの一歩を踏み出したのではないか、と思うのです。

    このブログで「なんちゃって」と呼ばれる類いの問題は、やった気になり、他者の行動変容を伴っていない話がほとんどではないか、と思います。

  2. 水野浩児 より:

    水野です。話題に取り上げていただきありがとうございます。良質な債権か否かを決めるのは、債権者と債務者の信頼にゆだねる部分が大きいと感じます。
    信頼関係とは一蓮托生の関係である潜在的合意が重要かと思いますが、メイン銀行の意識に課題があるケースが多いように感じます。橋本さんがご指摘のように、債務者の行動変容を伴えない取引は、自らの債権を貶め、高リスクにさらしていることになると思います。