🎯ゼロゼロ増枠・プロパー融資激減がもたらす弊害

コロナウイルス対応の制度融資の話です。

信用保証協会が100%保証を行う実質無利子無担保融資(ゼロゼロ融資)が増額されるにしたがい、民間金融機関のプロパー融資の減少傾向に拍車がかかっているようです。

このことが新たな弊害を生み出しています。

ゼロゼロ融資の借り手は基本的に小規模事業者ですが、ゼロゼロ借入増とともにプロパー融資をどんどん返済、これによって(信用リスクが激減した)金融機関による借り手の実態把握・途上与信管理が完全に手抜き状態に陥り、両者のコミュニケーションはどんどん希薄化しています。

取引関係の薄い、取引のない無責任な金融機関の口車に乗ってゼロゼロ融資を借り入れて、日頃の取引があるメインバンクなどからのプロパー融資を返済するケースでは尚更です。ゼロゼロ融資はメインバンクなど取引関係の濃密な金融機関が取り扱う制度設計にすべきと改めて思います。

いま求められているのは、資金繰り支援とともに事業者の経営改善、事業変革、事業再生の支援なのですが、プロパー融資残高が僅少になることで、このような本業面の支援は驚くほど疎かになっています。

プロパー融資残高がなくなっても事業者の本業面でのサポートは怠らないとの姿勢を貫いている地域金融機関は残念ながら少数派です。

結局のところ、「ゼロゼロ融資の大盤振る舞いとプロパー融資の減少」は予期されたことではありますが、貸し手である地域金融機関の“事業者支援の弱体化”をもたらしています。

となると、ゼロゼロ融資の保証機関である信用保証協会の役割が非常に重要になってきます。平成30年の制度改正により信用保証協会の業務として「経営改善・事業再生の促進、再チャレンジ支援等」が明記され、十分に任務を果たすことができる立ち位置になっているのですが、そのような問題意識を持って行動を起こしている信用保証協会は信じられないことに少数派、レイジー信用保証協会だらけです。

「貸し手の支援体制は弱体化、保証機関は当事者意識が欠落」、こういう状況のもとで、小規模事業者のウイズコロナ・ポストコロナの事業変革は遅々として進まず、事業者によっては粛々と廃業準備を進めているという現実をご存知でしょうか。

事業者の廃業増加や事業変革の遅延が、顧客基盤を揺るがし、収益面でも大きな打撃を与えることを、地域金融機関や信用保証協会は我がこととして真剣にとらえるべきです。

行政サイドに向けては、ゼロゼロ融資のような制度融資の増額という枠組み構築に留まることなく、地域金融機関や信用保証協会に対し、ウイズコロナ・ポストコロナに向けての経営改善・事業変革・事業再生の支援を厳しく促すことを求めます。

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    会計上の保全(実際は債権回収は難しい)はB/Sの一蓮托生関係を断ち切るリスクを高めます。中長期的には事業者の存立こそ金融機関の経営基盤ですから、本来「一蓮托生」ですが、短期的には自分の辞めた後のことまでは、気にしない人が現実も未来も決定します。我々が「これは、環境に悪い」と分かっていることに毎日手を染めているのと同じです。何かを強力に選択すれば、「計測できない世界(見えていない領域)」で、他の何かは劣後します。リーマンの後の金融円滑化は、単に返済猶予でしたが、ゼロゼロはさらなる負債ですので、律儀な事業者ほど「3年のうちに他人様にご迷惑を掛けず、事業をたたむか」という廃業意欲を促すという目を疑うような結果を招きかねません。金融行政は「好循環のメカニズム」を掲げましたが、さて、ここに良きインセンティブメカニズムを構築できるかどうか。地銀再編促進策は、好循環にどう資するのか。信用保証協会は、融資にのみ発生する保証料にだけ収益源を頼っていて良いのか。「コロナ禍の事業者の資金繰りを助ける」「金融機関の健全性を守る」を「壮大なる部分最適」に終わらせてはなりません。