邦銀に勤めていたころ、金融機関は休日でも利鞘が入ることをなんとも思っていませんでした。
外資系金融機関に転職し、投資銀行(らしき)業務に就くや、目標は年間手数料収入で設定され、日割りだといくら儲けねばならないという思考回路に変わりました。
そうなると連休はあまり嬉しくなく、ゴールデンウイークや夏休みは枕を高くして寝ていられなくなりました。
その後、コンサル業界に移りましたが、ここも完全にフロービジネスの世界。
一般事業会社からすれば、こんなのは当たり前の世界ですが、地域金融機関の人たちはストック商売のありがたみがどれだけ分かっているのでしょうか。
たしかに、金融機関のストック自体が産み出す利鞘は縮小しています。
だからといって、顧客との関係崩壊を代償としてまで目先の利益を狙った手数料ビジネス(顧客本位とこじつけた)に飛びついたり、リスクコントロールに難がある無理な有価証券運用に大きく舵を切ったりして、ストックビジネスの足らず米を埋めるという行為に出ることが正しい選択なのでしょうか。
ストックがあれば、まだまだ時間軸を確保することができます。
時間軸のなかでお客さまとの接点を濃密にし、事業実態をより理解し、深い信頼関係の構築を目指すべきではないでしょうか。
お客さまがお金の心配をせず、安心して事業に専念できる状況を提供することが資金繰りなのですが、そういう真の資金繰り支援をする金融機関には事業面での相談事があります。
その相談事に応えることが起点となり、投資銀行業務やコンサルティング業務や、規制緩和で広がった新事業による手数料ビジネスが始まるというのが正しい流れです。
手数料ビジネスが一人歩きするのは邪道であり、長続きするものではありません。こんなことをやっていたら、貸し手という優越的立場があったとしても、面従腹背型の顧客離れが進みます。
そもそも地域金融機関の場合には、その顧客基盤からして、どんなに頑張っても、このような手数料ビジネスからの利益がストックビジネスからのそれを凌駕するとは思えません。
地域において他に類を見ないアドバンテージを持つストックビジネス(融資業務)が安易なプロダクトアウトなり、収益の柱とはなり得ない手数料ビジネスに血眼になる最近の風潮に危機感を覚えずにはいられません。
コメント
仰る通りです。そしてその手数料収入を期待できる先しか回らなくなります。収益環境が厳しい金融機関は特にフィービジネスに傾注して、足元の銀行力をどんどんと低下させていってます。
それで本来しっかりとした、銀行員、信金マンの眼で見つめれば、幾らでも伴走可能な企業様をリーディングバンクに取られてしまう。という本末転倒な結果を生み出してます。
「基本的な財務知識」「基本的な業界知識」を携えてお客様に正対するのが【時間の無駄】とするならば、タクシーの運転手さんが、「営業者を運転するヒマがない」と言ってるに等しいですね。
ストックビジネスの業界から請負の中小企業のおやっさんになって、ひしひしとストックビジネスの有難みを感じます!