支店が主役

3年半前、地域金融機関 X の役員数名 (ワタシの懇意の方たちです) が、ヨーロッパで中小企業金融・個人金融の世界で注目度ナンバーワン、 スウェーデンの Svenska Handels Bank ( SHB ) の本店に視察に行きました。

地域金融機関 X はこのときの話も踏まえ、大改革に着手、組織的継続的なリレバンで地元顧客の評価は、鰻のぼりです。

ところで、

SHB の持続的な成功のポイントは『支店経営』です。

〜 規模は追わない。成熟経済では、銀行の規模と顧客満足度は逆相関。

〜 ボリューム目標なし、役職員のボーナスもなし。顧客のためにならない不必要な貸出が増えるから。

日本のほとんどの地域金融機関は、この期に及んでもボリューム増を大前提とした右肩上がりの事業計画を立てて、猛進していますが、ワタシから見れば大いに違和感ありです。

ところで、

『支店経営』は、「SHB がパイオニアではない、それよりはるか前に日本にあった」と、協同組織金融機関を知り尽くした NRさんが教えてくれました。

1970年代にコミュニティバンク論を提唱した、京都信用金庫の榊田喜四夫理事長 (当時) の著書を見ると一目瞭然。

長文になりますが、その一部を以下、引用します。

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顧客との心の触れ合いを求めたコミュニティづくりの展開です。地域社会の生活のセンターとしての機能を果たすために、生きた交わりのできる金融機関へ脱皮を図らなければなりません。
 コミュニティづくりの核になるのは支店です。「支店がコミュニティ・バンクの原単位である」という考え方です。
 経営の分権化を進め、支店長に権限の大幅委譲を行って、地域になしうるサービスに努めているところです。支店はその支店の地域の中だけのことを考えなさいと。京都の北と南とでは立地条件が全然違うわけですから、そこの特色をつかまえて、そこは何を一番求めているかを真っ先にとらえて求められているサービスをやりなさい。したがって、経営のやり方、現れ方も全部違う。その中で本当の住民の方々とのつながりをつくっていくために、いろいろなサークルをつくりなさい。(中略)
人のつながりをつくることによって、そこに人の輪が組織されますから、やがて、本当にこの人々の意識が成熟してきた段階で、たとえば地域で何らかの問題が起こった時に、この問題をわれわれはどう考えたらよいか、この地域をどういう地域にしていけばよいか、ということを一緒に考えられる基盤を、人間関係を通じて今からつくっておきましょうという、そういうおつきあいをする金融機関ですよ、と言っているわけです。

—————-

まったく違和感なく、頭にスッと入ってきます。

いま、こういう視点を持つ信用金庫、信用組合の経営者はどれだけいるでしょうか。


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コメント

  1. ミザール より:

    SHBを初めて知りました。

    まず多店舗展開で成功していることに驚きました。

    我が国が店舗を減らす方向にあるのと全く逆です。しかも収益率が非常に高いということは、狭域高密度経営がビジネスモデルとして間違いないという証明事例です。

    営業店に販売戦略・与信判断および経営全般の自主裁量がまかせられるかがポイントのようです。ワランダー氏の経営哲学を学び、現状経営を根幹から作り直していかなければと思った次第です.

  2. 路地裏の詩人 より:

    榊田イズムは地域金融機関は共感を広げることにより自らの存在を確立していくものだと理解しております。

    袋小路に追い込まれ、その原因を環境だと言い、慌てて効率化を進める。

    まず取り組むべきことは榊田イズムが知らせてくれていたはずです。

  3. 多胡秀人 より:

    路地裏の詩人さん、

    いま、京都信用金庫 増田会長のリレーションシップ・インパクト論に注目が集まっており、11/22のセミナーには多くの人たちが集まると聞いています。私も出席します。

    リレーションシップ・インパクト論の原点は榊田イズムだと思います。