🎯重荷を背負って経営ができるか

地銀の決算発表が続いています。

注意深くチェックしているのですが、

有価証券運用での逆風持続の可能性を重くとらえ、21年度内に多額の売却損を計上した山口FGのような決断をした地銀はなかなか出てこないようです。

~「昨今の地政学的リスクの高まりや世界的なインフレによる金融政策の正常化が加速することを踏まえ」。山口FGが修正の理由の冒頭に記載した一文は、ロシアによるウクライナ侵攻が決定打になったことをうかがわせる内容だ。(3月7日、日経電子版、地銀が抱えた「グローバルリスク」より)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28AA80Y2A220C2000000/

576億円の債権売却損を計上し、保有外国債券が330億円の含み損(3月末)となった、りそなHDの南社長の言葉「今期以降の柔軟性をあげるための判断だ」(5/12、日経電子版)を重くとらえるべきだと思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB092PM0Z00C22A5000000/

米国のインフレ率が8%、しかるにFF金利は未だ1%。

1980年代の金利乱高下時代からの市場動向を熟知しているある有識者(←ワタシが最も信頼する)は、これを「実質的に米国は7%のマイナス金利」と指摘していました。

この状況が長続きするはずがなく、減損処理の対象にならないからと高を括って重くなる一方の荷物(含み損の増加)を背負って経営の舵をとることは得策ではありません。

今後は、含み損の増加に加え、米国の短期金利の上昇はヘッジ・コスト増となり、キャリーの部分でも逆鞘が膨れ上がることが想定されます。何も良いことはありません。

重篤化しないうちに、すなわちコロナ関連融資による利息収入の増加効果が残り、貸倒引当金の戻し益が見込めた21年度中に、外科手術ではなかったかと思います。あとの祭りで騒いでもしょうがないですが、、、今からでも遅くない‼️

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そういう問題意識のもとで本日の日経本紙の第3面記事を読みました。

「地銀、米金利上昇で痛手~きらやか銀が公的資金申請へ 外債依存に傾斜、中小行に逆風強く」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220514&ng=DGKKZO60783400U2A510C2EA2000

地銀が抱える有価証券運用の問題が分かりやすく書かれた良い記事です。ポイントを抽出、列挙します。

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~地銀全体の決算は表向き堅調だ。12日までに決算発表した比較可能な約30行・グループを日本経済新聞が集計したところ、2022年3月期の純利益は合計で約3800億円で前期比36%増加した。だが、高収益のトップ地銀がある一方で、中小地銀では収益の低迷も目立ち、まだら模様だ。

~「その他有価証券」の含み益は約1兆4000億円と1年前より約7000億円減少した。栃木銀行で含み損が拡大したほか、琉球銀行などが新たに含み損に転じた。

~地銀は16年3月末時点で99兆4000億円だった国内債を21年9月末には84兆円まで減らし、投資信託を11兆円増の21兆8000億円、外債を2兆3000億円増の19兆5000億円に積み増した。

~世界的な金融市場の波乱が日本の地銀経営にも影響しやすくなっている。

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きらやか銀行の例を見るまでもなく、体力のない地銀の有価証券運用は厳しいのですが、地銀よりも小規模である信用金庫や信用組合の中にも、過大ともいえる海外金利等の市場リスクにさらされているところがあるようです。

投資信託や外債などの「その他証券」の保有残高が純資産の数倍といった身の毛のよだつ話も聞こえてきます。

地銀以上に深い闇です。

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