ノルマ撤廃の土台にあるもの

金融機関のノルマ廃止が話題になっていますが、数年前にノルマを撤廃した地域金融機関の役員さんと話をしました。

「ノルマ営業を良しとしている組織は従業員を資産として考えていないのではないか」

バランスシートに計上される資産 (貸出資産や有価証券運用資産) を質量ともに良化させるためには、人的資産 (従業員) の活性化が必須となります。ノルマのプレッシャーで人的資産が壊れたり(やる気喪失、心の病)、消滅 (早期退職)したりしようものなら大打撃、との至極ごもっともなご意見です。

この金融機関はノルマ廃止に先立ち、ワークライフバランスの取り組みや、事務改革などのBPRを進めていました。

さらに聞いたところでは、この金融機関の教育研修費は同規模の同業他社の数倍だそうです。内部講師による研修が悪いわけではないが、一流の先生の話を聞かせることにともなう効果は比較にならないとのこと。

「費用ではなく投資ですよ」

と役員さん。

おっしゃる通りです。

本ブログにコメントをくださる識者の方からは、「講師に招きたいが研修費がない」という地域金融機関が多いという話を聞きます。こういう金融機関の経営者に聞いてみたいものです。

「ヒューマンアセットへの投資よりも優先する投資は何ですか?」

過度なノルマで現場の尻を叩き続けている経営陣から答えが出ることはないでしょう。

役員報酬の一部をカットして、従業員の教育研修費に充てるようなところが出てくれば、アッパレを差し上げたいところですが、、、


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コメント

  1. 新田信行 より:

    全く同感です。当組は管理会計上、教育費は費用ではなく、投資として管理する事を検討しています。私達は、新しい資本主義を模索しています。

  2. 東北の銀行員 より:

    既にノルマを廃止している地域金融機関には共通点があります。

    某H銀行さんも4年以上前にノルマを廃止をしておりますが、更に遡ってその数年前から試行錯誤(BPRもその一つですね)を重ねており、その結論として「ノルマ廃止」という「手段」を選択したということです。

    その結論に至るまでのプロセスは恐らく10年では利かないのではないかと思います。

    当時は金融庁も好事例として注目していたので、そのうち「ノルマ廃止」だけをマネする銀行が出てくるのではと余計な心配をしておりました(笑)。

    地域金融機関としてどうしても成し遂げたい課題があり、議論や試行錯誤を重ねた結果、その目的を果たす為に「ノルマ廃止」という「手段」を選択するのであれば良いのでしょうが、未だにその前提にすら辿り着いていない金融機関も多いのではないかと感じております。

  3. 橋本卓典 より:

    東北の銀行員さんのおっしゃる通りです。

    顧客営業、システム、業務プロセス、部署割り、会議のあり方、人事戦略のすべてを「地域の役に立つ金融」に転換させるために、もはや道は無しとの覚悟で「手段」として、ノルマを廃止したのです。

    我々は「形式と手段」の奴隷にしばしば成り下がります。KPIやベンチマークで縛って欲しいとどこかで望んでいる人は少なくありません。検査マニュアル世代は特にそうでは無いでしょうか。

    若い方の多くはさすがに気づいていると感じています。「今までもうまくやれたじゃないか」という退職が迫っている年配の言葉に違和感を抱いています。ただ、行動に移して良いのかが、分からないという状況でしょう。

    平成から令和へ。世代も交代していきます。逃げ切った人の残した言葉はいつの時代も無責任であり、結局のところ自分が変わらねばなりません。

    ■「超パーソナライズ」=顧客から超パーソナライズなサービス・価値だと認められるか

    ■「フラクタル性の許容」=数値を理解し、その上で数値以外の価値にも目を向けることができるか

    ■「過去志向から未来志向」=不安な「未来」に背を向けて、テクノロジーも価値観もレギュレーションもまったく異なる「過去の確率」に逃げ込むのではなく、未来の失敗を仮定し、そこから現在まで遡って失敗の原因がなくなるまで探究できるか

    他にもあるでしょうが、未来に対処するには「捨て銀3」に書いた上記が参考になるはずです。