🚩なぜ1割にも満たない抜本処理の話だけなのか~問われる取材力

日経ビジネス最新号(9/26)の特集「増殖ゾンビ企業 コロナ融資の後遺症」を読みました。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01226/

いつものことですが、ゾンビ企業という表現には不快感を覚えます。

現場で小規模中小企業を懸命に支えている信用保証協会の幹部から以下のコメントをもらいましたが、

「従業員を守ろうと必死に戦っている企業に失礼です。コロナ禍で事業者は最も厳しい状況に追い込まれました。記者、金融機関等は、そのような苦労をしていないわけですが、人の痛みはわかってほしいです。ゾンビと言われることが、どんなに悔しいか。」

同じ思いです。ワタシもゾンビ企業という言い方は決してしません。

記事の内容について言えば、抜本処理の話がことさら多数派であるような書き振りです。

コロナ禍で債務が膨張した事業者が抜本処理に追い込まれる前段階で、金融機関等が行うべきことがあるにもかかわらず、かなりの数の金融機関や保証協会がそれを放置し逃げ腰であること、それが大きな問題であることがまったく書かれていません。

抜本処理に至るのは1割に到底届かないと言われます。

抜本処理を軽んじるつもりはまったくないのですが、

「9割以上の事業者に対し、金融機関や信用保証協会が行うべきはPL改善支援である」

という点がストンと抜け落ちた報道には違和感があります。

16日の旅芸人ブログ「伴走支援って」で、コロナ禍の過剰債務の今こそ、「BSの呪縛を解きPL改善支援に注力すべし」と発信しました。 ...

いま金融機関や信用保証協会が全員運動として「PL改善支援」を周知徹底せねばならないときに、しかるべきメディアが1割に満たない抜本処理の話に終始した発信をすることは、PL改善支援という地道な活動の重要性が薄まることになりかねません。

日経ビジネス以外の雑誌等でも、ゼロゼロ検証の企画が準備されているようですが、抜本処理に過度に傾斜した記事とならぬよう、地道に事業者支援(PL改善支援)に取り組んでいる現場への密着取材をお願いしたいものです。

「スタジオゲストの話が画像の解説になっていない」、 正月の天間さん、奥山さんの番組もそうでしたが、スタジオゲストの話が、画像の内容と...

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 長川康一 より:

    -生ける屍のごとく資金繰りだけで生されている企業を放置し続ければ、日本経済の低生産性・低賃金の解決は難しい-
    -リーマンショックまでは企業を潰せなう事情があった。しかし2012年以降の団塊の世代大量退職による人手不足により会社を守ることで社会の底を守る意味がなくなった。生産性の低い会社は退出し、働き手は生産性と賃金高い会社へ―と。
    同誌記者とコンサルタントは述べているが、彼らの前提はグルーバル経済であり、彼らがゾンビという企業のほとんどは、グローバルでなく地域社会で事業を展開している事業者である。それ故その事業は地域社会のキャパに大きく左右される。
    彼らの論理に従えば地域社会の必要はない。また彼らにとっての生活者とは個としての生活者であり地域生活者ではない。
    こう見てゆくとゾンビ企業を批判する彼らこそが、生産性と高賃金の覆面をした「ゾンビ」と言いたくなる。
    またこうした企業が多くなったのは、国の政策が「カネ」という面だけの経済政策にとどまり、地域社会構想・地域産業構想という政策が示されないことにも大きな原因があると私は感じています。

  2. 橋本卓典 より:

    担保保証の他人事保全金融は、人口増加、右肩上がりを前提とした昭和モデルなんです。サステナブルが求められる令和は、特に地域においては真逆を目指さないとダメですね。

    数百万の専門家費用を払えない企業は利用できない再生支援協議会(現・活性化協議会)、結局PL改善には繋がらない私的整理ガイドライン。これでは事業性があっても廃業、倒産しか道がなくなります。

    PL改善もしくは、40代以下の後継者による事業転換ができれば、いくらでも未来を変えることはできます。心ある金融機関は分かっています。しかし、知見やノウハウ、人材がいない。これをなんとかするのが最優先です。

  3. 私は沖縄県の出身なのですが、長川様のコメント内の、
    『国の政策が「カネ」という面だけの経済政策にとどまり、地域社会構想・地域産業構想という政策が示されないことにも大きな原因があると私は感じています。』
    というお言葉が、沖縄の現状とも重なり大変勉強させて頂きました。ありがとうございました。