地域金融機関の人的資本投資の動きが全国に広がっています。
給与アップ、人材教育費用の増額などは、新規雇用の観点から、また従業員のやる気を引き出す上でも、経営としてはやらねばならぬことです。
いつもの旅芸人の癖で水をぶっかけることを言いますが、これだけでは大量離職の流れを食い止めることは難しい。
たしかに、離職者のなかには処遇面での不満をあげる人たちはいますが、
それ以上に「経営理念にひかれて入ったが、やらされることは全く違っていた」、「顧客本位、地域のためにといいながら、自社の収益のためだけに働かされた」ことを大きな理由とする人たちが多いように思います。
このような二枚舌経営を根本から是正しない限り、いくら人的資本投資に力を入れても、こういう人たちの離脱は止まりません。
数年前、金融庁は顧客と金融機関の「共通価値の創造」という言葉を発信していました。
残念ながらいまは、「金融機関の収益ありき、顧客本位はなんちゃって」で、共通価値の創造「もどき」となっているのが多くの地域金融機関の姿です。そして、地域の取引では極力リスクを回避し、コントロール不能な海外金利などで巨大なリスクテイクで穴をあける。
そもそも地域金融にとって根幹となるのは顧客「リレーションシップ」と担い手である「人材」であり、この2つの要素(無形のもの)があるからこそ良質な融資ポートフォリオやソリューションビジネスへとつながるのですが、
共通価値の創造「もどき」が、この2つの要素を崩壊させています。
大量離職は、まさにその現象であり、経営がノーを突きつけられていることに他なりません。
人的資本投資とともに、「もどき」の是正もお忘れなきよう。