奴隷は鎖を恋しがる

9月に公表されたディスカッションペーパー(DP)「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を熟読すると、まさに地域金融機関の経営力が問われていることを感じます。

このDPでは、検査マニュアル別表に基づき定着している現状の実務は否定しないものの、地域経済の状況、融資ポートフォリオの特性などを踏まえ、将来を見据えた信用リスクのとらえ方に創意工夫を凝らすことを認めています。

もちろん恣意性に対する歯止めとして、適切なガバナンスと内部統制は前提ですが。

さて、

いろいろな地域金融機関の経営層と話すのですが、驚くことにこのDPの内容を基に融資業務にメスを入れ、再構築に着手しているところはほとんどありません。

今さら検査マニュアル時代のやり方を継続するつもりなのでしょうか。

マニュアルの鎖を解き放って自由にやりたいと大合唱していたのに。

一部の金融機関からは新しい鎖はいつ出てくるのか、といった要望もあるようですが、呆れてモノが言えません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 長川康一 より:

    10/16に日本公認会計士協会は、今デスカッション・ペーパーに対しする意見として、「自己査定の枠組みを明文として残すべき」であり、「金融商品の会計基準に準拠して貸倒見積高を算定する際には、自己査定の別表区分に応じて債権を区分し貸倒見積高を算定すべき」と公表しています(金融経済新聞より)。したがって監査法人もこれと同意見であるはずです。結局、金融機関独自の査定基準でやられては、仕事ができないということと思います。金融機関・監査法人ともに検査マニュアルに慣れすぎてしまいました。このままではずるずる行ってしまいます。
    今一度検査マニュアル以前、査定をどうやっていたか思いだしてみる必要がありそうです。検査マニュアル別表が示されたことで、お客さんを区分にはめ込むことに金融機関は悩んできたはずです。悩んだのは引当増えるという決算上の問題もあったけれど、営業店サイドではお客さんに今まで通りの対応ができなくなるということに本当に悩んだはずです。