過疎地こそ、地域金融機関は起業者を後押しする創業支援を最優先に位置づけるべきと思うのですが、どこの地域金融機関も事業メニューの片隅に置かれているのが実態です。
はっきり言って本気度が足りません。
そのような常識を覆す取り組みをしているのが、石川県能登半島の七尾市に本店を構える「のと共栄信用金庫」です。
たまたま先日、同金庫の大林会長、鈴木理事長にお目にかかり、同金庫が牽引する創業支援活動についてうかがう機会があったのですが、本日の日本経済新聞 北陸版にその活動ぶりが掲載されました。
のと共栄信用金庫が七尾商工会議所、七尾市役所、日本政策金融公庫とともに創業者の事業を支援する「ななお創業応援カルテット」がスタートしたのは 2014年。
~発足以降、カルテットへの相談は累計187件にのぼり、このうち83件が開業にこぎ着けた。廃業は5件あるが、個人の事情によるものが主で、業況悪化は1件のみだ。創業事例の特徴は、女性が33件と全体の4割を占める点だ。(同記事)
~石川県外からの移住者やUターンによる創業も目立ち、全体の2割近い15件。七尾商議所の大林重治会頭(のと共栄信金会長)は「移住者同士でネットワークができたり、移住者のSNSでの発信が新たな移住者を呼び込んだりする動きも出てきた」と話す。(同記事)
失礼ながら能登半島のような過疎地において、5年で 83件の新規創業(業況悪化による廃業はわずか1件) というのは、ワタシの想像の域を超えるものなのですが、成功の要因は「ななお創業支援カルテット」(とくにのと共栄信用金庫) が創業後も経営課題への助言などを継続する“伴走支援”をするところあるものと思います。
過疎地では因習にこだわる長老たちが新規創業者である「よそもの、わかもの、ばかもの」の前に立ち塞がる図式がしばしば見られます。こういう長老たちは借り手として見た場合、債務者区分の芳しくないケースが多いものです。
長老たちにモノを言えるのは地域金融機関だと思うのですが、多くの地域金融機関の立ち位置は必ずしも新規創業者サイドにあるとは思えません。
過疎地では新規創業者は金の卵です。それを押しつぶす人たちから守り、伴走して応援するのが地域金融機関、とくに信金や信組ではないでしょうか。
コメント
「のと共栄信用金庫」さん、素晴らしい取り組みですね。
ぼくも創業後の伴走支援が重要であると考えます。巷では創業・開業資金の取り扱い件数ばかりフォーカスされていますが、重要なのは創業後のフォローアップなんです。
それは創業後に起こる事象は事業者様にとってすべて初めての事であり、金融のプロの力が必要となるからです。
創業後、創業計画と比較し、トップラインが減少して推移した場合は修正計画の策定(原因究明、販路拡大策、経費圧縮策等)、反面、増加して推移した場合においても上り坂の資金を要します(創業後、間もない事業者様の財務状況は脆弱で当然です)。
手間を惜しまず、伴走支援し、選択されている「のと共栄信用金庫」さんを尊敬します。