この期に及んで、緊急事態に陥った顧客に直面している“現場”と、平和ボケであぐらをかく“本部”との温度差に愕然とする話が耳に入って来ました。
既存融資の条件変更やスピーディな新規融資に応じることで懸命に顧客に寄り添おうとする現場と、あくまでも平時のモノサシをふりかざし、与信費用の増加を抑制しようとする本部との溝がまだまだ存在しているのです。
いまは大恐慌。平時モノサシを封印し、危機時のモノサシを前面に押し出すときではないでしょうか。
地域金融機関にとって、大恐慌モードでもっとも重視しなければならないモノサシ、それは融資先の「社会性」だと思います。
社会性、すなわち地域にとってなくてはならないかどうか。
社会インフラかどうかという狭義ではなく、雇用や地域商流という視点でとらえるべきです。そう考えれば、大部分の地域事業者はこの要件を持っています。
社会性の大きい事業者は、財務状況の良し悪しにかかわらず支え続けていくこと(経営改善、事業再生、経営者に問題があれば首のすげ替えも)は、平時においても地域金融機関の基本姿勢たるべしとワタシは考えていますが、大恐慌時代にはこの「社会性」を最重要なモノサシとして円滑な資金供給を行うべきだと思います。
これは審査や資産査定の部署の判断という範疇を越えるものであり、経営自身がコミットせねばならないことです。
社会性を優先させることで、与信費用が増大し、赤字決算となり、資本が毀損するという展開は十分予想されますが(大恐慌だから避けて通れません)、地域にとってなくてはならない事業者が資金繰り破綻し、消滅し、失業者が増え、治安が悪化し、コミュニティが崩壊することと比較すれば、答えは明らかです。
「与信費用→赤字決算→資本の毀損」に対しては本業支援、経営改善、事業再生。リレバンの王道で対処していくことになります。そして公的資金による金融機関の資本増強の道も用意しておかねばなりません。
冒頭の話の地域銀行もそうなのですが、今までリレバンを疎かにし、取引先の経営改善・事業再生に背を向けていた地域金融機関には至難の技です。
しかしながら、大恐慌になってしまった以上、やるしかありません。
コメント
平時において何に危機感を持っていたか、今の戦時にそれが如実に表れてくるように思います。
色んな意味で、これをしっかりと検証出来る時が早く訪れるように祈ってます。
7代目コロナがどう展開していくのかは誰にも分かりません。8代目が現れるかもしれません。よって、未来の返済可能性など、どの事業者にもありません。大企業でさえ返済可能性など、今の状態を前提とすれば、難しい会社ばかりです。
融資判断のモノサシを変えなければならないのは当たり前で、融資判断だけでなく、融資後、どういう支援を講じていくのかをも含め、現場から本部までが動けるかどうかが、地域の未来を大きく左右することは間違いありません。
話を聞いていて面白いのは、泰然自若として事業者に向き合っている金融機関と、慌てふためいたり、「つなぎ融資とかやったことないので」とか狼狽している金融機関があることです。
地域ベース、多胡さんのおっしゃる「社会性」に照らした事業者ベースで考えれば、国の融資制度なども、着金まで事業者が不安を抱えるでしょうし、借りた後のこともさらに不安です。地域と事業者の不安に向き合ってこそ地域金融機関です。
こういう危機の時こそ、いろいろな正体が見えるものです。