地銀の決算発表報道を見て

北から南まで、地域銀行の決算発表の新聞記事に目を通しました。

個別銀行のプレス発表を細かく見ていないので、あくまでも first impression なのですが、頭に残ったことを列挙します。

(1) どこも減益決算。そして来季も減益予想。マイナス金利の影響が大きいことは言うまでもありません。とくに預貸率が低く、国債などの大量償還の再投資リスクの大きな銀行は厳しいものと推察されます。

◎ 今後の施策として、

(2) 収入の方では、手数料収入への依存度を高めるとの話が多いのですが、預かり資産業務でというのはどうなんでしょうか?

赤字転落でトップが交代した福島銀行も、

「記者会見で加藤氏 (注: 新社長)は『証券分野など手数料ビジネスに力を入れ、貯蓄から資産形成への流れをもっと強くしたい』と強調した。」(日経東北版5/12)

経営者の判断ですから、外野がとやかく言う筋合いではないのですが、組織的継続的なリレバン未開の地・福島において、中小小規模企業との真のリレバンに取り組む銀行が出てくるチャンスだったのに、との残念極まりない思いがあります。

一方、ミドルリスク層へのコミットメントや経営改善や事業再生への取り組みをあげている銀行が少ないのには、残念と言わざるをえません。

「北国銀行は18年3月末時点の中小企業・個人向けの貸出金残高が1兆7387億円と前年度末比9%増えた。全体に占める割合は72%と3.4ポイント増加。金利が低い都市部の中堅・大企業向けの貸し出しは6%減り、地元中小への移行が鮮明に。安宅建樹頭取は『ボリュームを追わず新規創業や経営支援などにきめ細かく対応する』と強調した。」(日経北陸版5/12)

これこそが地域銀行の目指すべき方向性だと思うのですが、印象に残ったのが北國銀行だけというのは寂しい限りです。

(3) コスト削減の観点から店舗統廃合というのが多くの地域銀行から出てきています。これは当然だと考えますが、効率化のためのRPA (ロボティック・プロセス・オートメーション) 導入というのには、大いに違和感があります。

地域銀行の規模では、RPAは費用対効果の面で問題ありです。溺れるものは藁をも掴む思いでしょうが、藁を売った業者だけが利を得るという結果になりかねません。

先期に次いでコア業務純益が連続赤字 (前代未聞) となり、取締役相談役 (支離滅裂な役職?) が取締役退任した島根銀行も、店舗統廃合などのコスト削減策 (一過性?) を発表しましたが、肝心の持続可能な収益モデルは見えてきません。

これを作り上げることこそが経営手腕だと思うのですが、どうなることやら。

第2地方銀行の業界には、日豊アライアンスのような好事例があるのですから、トップラインを増やすための顧客本位の施策をしっかりと練り上げてもらいたいものです。

(4) 4月11日の競争のあり方に関する有識者会議の報告書に対する批判が相次いでいます。

決算発表の場でも、地域銀行のトップたちはメディアから報告書についての意見を求められています。

トップたちは、報告書の中にある「県別の分析 (銀行が1つも残れないのが23県) 」に対し、批判の大合唱です。

「雑な分析だ」、「短絡的」、「新聞報道を見て顧客が動揺しており、迷惑千万」。

まったくおっしゃる通りです。

報告書で言いたいところはそこではありませんし、この分析はトラバンを前提としたものにすぎず、リレバンを進めるべきだという金融行政とまったく平仄がとれないことも事実です。(だったら「何故そんなものを載っけたんだ」と言われたら弁明の余地はありませんが)

再三このブログでも伝えていますが (言い訳がましいですね) 、報告書に名前を連ねている一人として猛省しています。


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