中国財務局のシンポジウムの結果報告

3月に全国の財務局主催で行われた「金融仲介の質の向上に向けたシンポジウム」の詳細が、それぞれの財務局のホームページに掲載されています (準備中のところもありますが)。

年を重ねるにつれて、シンポジウムの様子が非常によく分かるよう、いろいろと工夫がされています。

ワタシは、平成29年度/沖縄、28年度/関東、27年度/南九州、26年度/中国と基調講演・パネルディスカッションを行なっているのですが、毎回多くの気づきを与えてくださるのは、パネリストとして登壇される企業経営者の方々です。

先週アップされた中国財務局のシンポジウムの結果報告は、詳細にわたる議事録がアップされており (だいたいは要約が多いのですが) 、基調講演やパネルの模様を臨場感を持って感じることができます。

http://chugoku.mof.go.jp/kinyusyouken/
kinchou/shinpo/300320shinpo.html

パネリストの八天堂 代表取締役 森光孝雅さんの話は、地域金融機関で働く人たちには是非とも読んでもらいたい内容です。

八天堂は、昭和8年に広島県三原市で和菓子屋として創業したパン屋さんですが、昨今は東京の山手線の駅などでクリームパンを求め行列ができるほどの市民権を得ています。

また、八天堂の千葉県の製造拠点は障害者雇用の模範ともいえる存在ですが、かつて民事再生法を決断せざるを得ない局面まで追い込まれたときの話です。

長文になりますが、以下は森光さんの箇所です。

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「創業 85 周年目を迎える株式会社八天堂の森光です。この 30 年のあいだに、530 万社が 381 万社にと森会長 (多胡注: 日本動産鑑定の会長、当日の基調講演者) がおっしゃいましたが、約 150 万社減っています。しかも、できた企業もあるわけですから、いかに会社がなくなっているか。よほど努力しないといけません。経営課題が明確ではないから、これだけなくなっていくわけですね。私も民事再生法の書類まで目を通して、倒産手続きの一歩手前までいきました。経営課題がまったくありませんでした。経営者として失格だったのです。
今は、金融機関さんといいお付き合いをさせてもらっていますが、そこまで追い込まれて、土砂降りの雨が降り出して傘を貸してほしいと金融機関を訪ねていっても、貸してくれるわけがない。それは当たり前の話です。金融機関の職員さんも志を持って金融機関さんに入られていると思います。もしそうでなかったら、なんのために金融機関さんに入られて行員として勤めておられるのか。金融機関の職員さんには、なんのためにこれから働いていくのかを、しっかり自覚してもらいたい。自覚があるのとないのとでは、生きがいもやりがいも全然違うと思います。」

「私の目の前に現れたメインバンクの融資担当の次長は、初めて見る人でした。それだけ私は金融機関に足を運んでいませんでした。PL や BS を持っていったのですが、数字をつついている (多胡注: 粉飾ということでしょう) わけです。厳しい会社のほとんどは、数字をつついていますね。なぜかというと、お金を貸してもらわなければ、倒産ですから。本当はやってはいけないのですが、生きていくために、多少なりともそういうことをやっています。ですから、金融機関に行ったとき、「なんなんだ、この数字は」と、相当厳しくお叱りを受けました。ただ、その金融機関の担当の方は、「なんとかよくしてやりたい」と いう思いを根底に持っていて、非常に熱い方でした。たまたま、その金融機関の支店の目の前にわれわれの本店があった。その担当の方は、私にとって恩人の一人です。その方に言われました。「経営者をやりたいのか、どうなりたいのか」と。「頑張りたいんです、喜んでもらいたいんです」と伝えたら、「僕もそうなってもらいたい。一緒に頑張ろう」と言われました。こういう熱い方はいらっしゃるのです。
金融機関の、特に渉外の方、外を回られている方は、熱き思いを持っていなかったら、 回ってもらわなくていいと思います。何も伝わってきませんから。もちろん金融機関の方だけではありません。経営者自らも、熱い思いを持っていなければ、いくら金融機関 の方が熱い思いを持ち、また、数字面でそういうことを語られても、全然響かないでしょう。すべての会社を救っていくのは無理に決まっていますが、伸びていく、可能性がある会社は必ずあります。
森会長 がおっしゃったように、黙っていたらどんどん廃業に追い込まれていく時代じゃないですか。これから AI 社会にどんどんなっていく中、まさに金融機関の方の役割の時代だと思います。ある意味、コンサルタント業じゃないですけど、「自分が企業を救っていく、企業のパートナーになっていく」といった思いまで持ってほしい。金融機関の方には、地域を活性化し、共に名経営者をつくっていく、経営者に寄り添っていく、 という思いを持って取り組んでもらいたいと思います。私にはそういう出会いがあったので、力強く言わせてもらいます。」

(以上、原文通り)
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かつてはこういう銀行マンはたくさんいたのですが、今は、、、

当日シンポジウムを聴きにきていたのは金融機関がマジョリティだと思いますが、彼らは金融機関の姿勢が多くの中小企業を倒産や廃業に追い込んでいることを痛感したでしょう。

取引先の経営改善、事業再生の局面で、地域金融機関の真価が問われるのです。

八天堂に厳しい注文をつけて、森光さんの経営者としての自覚を呼び起こした銀行員 (融資次長) のその後のキャリアはどうだったのでしょうか。


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