正体不明の日本地図のために、地域金融機関の批判の的となっている「地域金融の課題と競争のあり方」(4月11日、by 金融仲介の改善に向けた検討会議) ですが、その中に次のような文言があります。
「地域銀行は貸出残高を増加させることに より貸出金利の低下の影響を相殺しようとしている。特に、近年、地域銀行は県境を越えた貸出を積極的に増加させている。この結果、多くの地域金融機関は、従来以上に県外の金融機関との競争に直面している。」
いわゆる地域銀行の越境作戦です。
越境作戦が加速する中で県単位での競争政策を考えることは現実離れしているという論点が、前述のレポートでも記載されているのですが、ほとんどの場合、ぶら下がり融資を前提とした越境であることは否めません。
借り手の業況が悪化したら逃げる、そういう腰がドン引きの「ぶら下がり融資」はレイジーバンクの象徴と考えられます。
越境で攻める側もレイジーなら、守る方もレイジーバンク。
レイジーだから武器は低金利しかない。結果として、レイジーバンクの融資先ゾーンに入る企業向けの貸出金利はつるべ落としとなっています。
融資ボリュームは増えても金利収入には貢献しない。
果てしないチキンレースですね、イヤハヤ、、、
一方、借り手は短期的には競争による金利低下を享受できるものの、業況が悪化した場合、取引金融機関数を増やしたことが保険機能を果たしているとは思えません。単なる気休めです。
いったい何のための越境作戦なのでしょうか。
*****
越境作戦で意味があるのは、以下の3つの条件が揃ったときだと思います。
(1) 攻め手が、低金利ではなく、リレバンの思想 (経営改善、事業再生、すなわち悪くなっても「逃げないこと」も当然含みます) を持って越境作戦を展開すること。
(2) 攻め込む地域にはレイジーバンクしか存在していないこと。
(3) 攻め込む地域に所在する借り手が、目先の低金利に目が眩むのではなく、信頼関係を土台にした金融機関との取引関係を望むこと。すなわち、金融リテラシーの高いリレバン社長 (1月29日と3月13日の本ブログをご参照ください) であること。
さて、
上記(2) に該当する地域をさがすことは容易です。全国どこにでもあります。情けないです。
ところが、そういう地域に攻め込んでいる金融機関の多くもレイジーバンクであり、上記(1) にお目にかかることはめったにありません。
上記(3) もまだまだ道半ばです。金融機関との信頼関係が崩壊し、不信感が強いため時間がかかりそうです。
3条件が整えばどうなるでしょうか?
レイジーバンクの「捨てられる銀行」化は加速することになります。