「強い発言力を有する理事長に対して十分な牽制機能が発揮されておらず、上記(2)ⅱ (→ 一部の営業店幹部は、監事から反社会的勢力等との関係が疑われるとの情報提供を受けていた者について、十分な確認を怠り、同者関連の融資を実行している) に関し、懸念を抱いた監事及び監事会から理事長に対し、複数回にわたって書面で調査を要請したにもかかわらず、理事長は当該要請を拒否し、組織的な検証を怠っているなど、内部統制が機能していない。」
5月24日、関東財務局のホームページに掲載された「西武信用金庫に対する行政処分について」の中にある文言です。
西武信金は銀行法26条による業務改善命令を受けました。
「理事長が監事及び監事会の要請を拒否した」
というのはガバナンス面から弁明の余地なしです。金融機関の社外役員の仕事をしているワタシの目からも看過できることではありません。
ところで、
今回の西武信用金庫の問題をスルガ銀行と同じであるとの論調があります。
確かに「行き過ぎた成果主義」、「ガバナンスが機能していない」ことは共通ですが、両者のビジネスモデルは明らかに違っていました。
ワタシはリレバンが始まった2003年以来、リレバンの視点から全国の地域金融機関を見ていますが、スルガ銀行にはリレバンの微塵もなく、トラバンの住専でした。(同銀行の方とは2003年以来、接点がないので一方的に決めつけていることは否めませんが)
一方、西武信用金庫はリレバンの本質を理解し、その組織的継続的な取り組みを目指しており、動きの鈍い首都圏の多くの地域金融機関を尻目に、着実に実績を積み上げていったとワタシは評価していました。
しかしながら、収益至上主義 (→ 成果報酬がともなう) によるものかどうかは分かりませんが、広域展開の中で、不動産関連取引の比重がどんどん高まっていったのは気になっていたところです。
そもそも、
信用金庫は稠密・深掘りで狭域を面でカバーするビジネスモデルです。その中で金融包摂を追求する使命を持っています。だからこそ軽減税率が適用されているのではないでしょうか。
昨今、信用金庫の中には地域銀行との同質化が進み、地域銀行の悪いところをモノマネするところが増えているように見えます。協同組織金融機関の原点に戻り、改めて地域のお客様にとって「なくてはならない存在」を目指していただきたいものです。
コメント
「営利を目的としない協同組織の地域金融機関」の素晴らしさを自ら見失っている気がします。
以前、同じ取引先(破綻懸念先です)について地元信金の職員と話した際、「ウチは○○銀行さんと違って最後まで面倒見るから」と熱く語られ、激論になりつつも信金の「矜持」というものを感じたことがあります。
彼は私の同窓生で正に「地元の信金マン」といった人間でしたが2年程前に自主退職しました。
事情を聞きましたが理由は銀行を辞める多くの人間と同様、過剰なノルマや支店長からのプレッシャーに耐えられなくなったというものでした。
彼から信金は銀行の「下位互換」と思っている職員も多いと聞きました。しかし、そもそも商業銀行と信用金庫は全く別物です。収益を追求することが目的ではなく、相互扶助の精神で地域社会を発展させることが信用金庫の理念であるはずです。
今の地銀こそ、見習うべきは信用金庫・信用組合の精神だと思うのですが、逆に信金が地銀のモノマネとは皮肉なものです。
お言葉ですが、今回指摘された内容は、リレバンの対極にあると認識しています。
全容を語ることはできず、あくまでも部分的な景色しか見ておりませんが、西武信金は「お困り事に応えよう」という姿は、部分的であれ、私には見えていました。そこは多胡さんと同感です。
しかし、私が気になったのは、過剰なインセンティブです。●千万プレーヤーの支店長が、業績次第では次の年は●百万円と。。。私が執拗に指摘している「計測できない世界」の何かが壊れている恐れを感じていました。この部分はスルガ銀行にも感じました。異常なインセンティブで人をコントロールしようとすると、人は目に見えない何かが壊れて異常な行動に出る。大企業の多くでは、この病を社内政治、保身と呼びます。