(続)儲からなくてもやらねばならぬ

小規模の地域金融機関の中には個人向け証券業務を収益の柱に据えているところが少なからずありますが、大丈夫なのでしょうか。

地域における個人顧客の将来の生活設計のために資産運用の支援をすることは、地域金融機関として重要な仕事であることは間違いありません。

ところが、そもそもこの業務の収益性は高くなく、積立型やノーロードの商品が主流となる中で、その収益性は悪化の一途をたどっています。そして顧客数の限られている小規模の金融機関の場合、なおさらです。

もはやこの業務からは多大な収益を見込めないと思うのですが、地域金融機関のどこかが地域の個人顧客のために担わねばならない大事な業務であることも事実です。

証券業務は装置産業です。自前でやる場合、重いインフラの負荷がかかります。しかるに手数料収入の見通しは厳しい。証券子会社を持つ大手地銀からは「収益の柱にならない」という本音がチラホラと聞こえてきます。

それでも無理して儲けようとすれば、ハイリスク・ハイコミッションの商品に手を染めざるを得ませんが、そうなるとフィデューシャリーデューティに抵触する可能性が出ますし、そういう商品の販売をやらされる従業員は嫌気がさして辞めてしまうでしょう。

フィデューシャリーデューティにからむ風評リスクにヒューマンアセット崩壊の打撃と、ハイリスク商品販売による手数料収入を天秤にかければ、どちらが得かは、誰にだってわかることです。

このように考える賢明な地域金融機関は、その種の商品の取り扱うことはないでしょう。

オペレーションのローコスト化は必須です。

ガリバー地銀 (対顧客接点を担う) と大手証券会社 (バックヤードを担う) が包括業務提携したのは当然の流れと考えられます。

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コメント

  1. 新田信行 より:

    当組合は、拙いながら、積み立てNISAや平準払い保険などに取り組んでいる、数少ない協同組織金融機関です。当組の組合員の多くには、大手の銀行や証券会社や保険会社はアプローチしません。ここにも金融排除があるのです。郵貯には期待していたのですが、今回の件で失望しました。

    金融機関の目的が収益ならば、こうした商品は取り扱わないでしょうが、組合員や地域の持続的な繁栄が目的ならば、取り扱わざるをえません。もはや定期積金のみでは、組合員の資産形成は出来ないからです。

    経営者としては、何とか当組合の直接経費だけでもまかなえるようになって欲しいです。