「地域に密着した取り組みを行い、家電販売の枠にとらわれず、住まいの事はなんでも対応させて頂きます。これからも、さらに地域の皆様に安心出来る店づくりを目指します。地域の皆様おひとりお一人の役に立つサービスへ、少しでも近づくように、これからも進化しつづけます。」
これは東京都町田市の家電を取り扱う「でんかのヤマグチ」のホームページにある言葉です。
http://d-yamaguchi.co.jp/philosophy/
ヤマグチは10年ぐらい前からメディアでも取り上げられており、その知名度はいまや全国区です。
旅芸人は同社のホームページをフォローしていますが、大型量販店にはない独自の「街の電気屋さんモデル」が着実に進化しているのが分かります。
5年ぐらい前に協同組織金融機関で講演する際には、マス個人向けの金融取引のモデルは「でんかのヤマグチ」と言っていましたが、残念ながら、そのビジネス手法を取り入れる信用金庫や信用組合はありませんでした。
~実際、社員の中にはお得意さんとの間に完全な信頼関係を築いている者もいます。その社員が、いつものように家に上がり込んで、お得意さんと会話をしていました。その様子を目の当たりにした、お得意さんの息子さんが「普通、家に他人が上がり込んでいたら不信感を抱くはずなのに、全く違和感がないから不思議だ」と話したというケースもあります。ここまでいくと、ほぼすべての家電をヤマグチで買ってくれるようになります。顧客を減らす代わりに絞り込んだお得意さんに対して、今一度丁寧にサービスを提供し、家族と一体になるほどの信頼関係を築いて、適正な価格で繰り返し商品を買ってもらえるようにする。このヤマグチの基本戦略を改めて徹底しなければならないと感じています。(2019/5/9、日経ビジネスオンライン、太線は多胡)
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/00124/00015/?P=3
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個々の担当者ベースではヤマグチモデルを実践している信金信組の職員たちはいますが(実績も上がっている)、組織的なものとはなっていないと思います。
規制緩和が進み、地域金融機関の業種が多様化するなかで、個別事業への新しい取り組みが出てきているものの、新サービスのプロダクアウト的な印象は否めません。
そういう中で、17日のニッキンオンラインにある、諏訪信用金庫の「まごころサポート」には、でんかのヤマグチと同じものを感じました。
~諏訪信用金庫(長野県、田中輝明理事長)は、地元企業と連携して高齢者の身近な困りごとを解決する生活支援サービスを始める。ワンコインから家の掃除や不用品処分、買い物代行などを依頼できるもので、9月16日から年金受給者を中心に案内を始めた。
https://www.nikkinonline.com/article/63318
こういうサービスを導入するにあたって、「それをやったらいくら儲かるんだ」という金融機関経営者が往々にしているのですが、これは間違い。トラバン病に侵されています。
「まごころサポート」はそれ自体で儲けるというたぐいのものではなく、地域の個人顧客との金融取引基盤を強化する(つまりダンピング・過度な競争に巻き込まれないようにする)ためのものだと考えます。