20年近く前になりますが、厳しい事業環境にある地元中小企業に対し、事業に専念できる資金繰りのみならず、事業の再構築支援にしっかりと取り組んでいる地方銀行の役員Xさんと会い、感銘を受けました。
Xさんの取り組んできたことのなかには、インバウンド観光の嚆矢として知る人ぞ知る実例もあります。
その後、Xさんと親しくなり、彼の銀行の本店に出入りするようになったのですが、びっくりしたのは、彼を除くすべての役員に顧客サービス業のニオイがしなかったこと。内部企画管理、従来型の審査、資金運用で頭角を表してきた人たちがずらり。
どうやらこの銀行のリレバンとやらは、Xさんの一本足打法だったようで、彼の獅子奮迅の活躍でこの銀行は「リレバン取り組みで群を抜いている」と顕彰されていました。
こういうパターンは地銀トップバンクにわりと多いのですが、
2番手や3番手の地銀となると、役員に名を連ねるのは圧倒的に顧客取引で実績を上げてきた人たち。
ですが、
その多くは浪花節的な魅力(これはこれでワタシは嫌いではありませんが)によってお客さまの心を掴んできた人ですが手法はプロダクトアウト。Xさんのような仕事をする人は多くはありません。
プロダクトアウトの浪花節軍団(そのなかにポツリとXさん型がいる場合もある)で、多くの2番手3番手銀行の経営陣は形成されています。
こういう銀行では、往々にして内部管理部門の人間は厚遇されておらず、コンプライアンス上の問題が内包されており、営業主導で審査が甘くなるのは残念です。事故が起こる確率も高くなる。かつて破綻した2番手3番手銀行の典型的構図です。
地域金融機関の経営は、
Xさん型の営業系役員(プロダウトアウト型はお役御免)と、内部企画管理・審査・資金運用とのバランスが必須と、改めて強く感じる昨今です。
コメント
起業した若手経営者と議論していて、彼は上場を目指していたのですが幹事証券から管理部門の充実を指導され指導通りのオペレーションをしたところ利益面が著しく悪化。で、その時は上場をあきらめましたが、彼の偉いところはそこからビジネスモデルを見直し収益性を向上させる中で再度管理部門を充実させながら上場を目指しています。
それに比べ金融機関の場合はすでに管理態勢は整備されているはずですが、収益に軸足を置きすぎたオペレーションが管理部門に無言のプレッシャーをかけ管理態勢が脆弱になっているケースも少なからずあると思います。(モノ言う管理部門の役員を更迭するなど)
足元の収益は少し上がるかもしれませんが、長期的にみれば銀行収益を不安定にさせるはずですし、管理部門のコントロールが効かない営業態勢はお客様の信頼を損ねるケースも垣間見られます・・。