余計なお世話だ

企業の改善支援は究極のリレーションシップバンキングですが、どこの金融機関においても、この業務の習熟度の高い人材が限られていることから、各金融機関の実情に合った業務運営を行っています。

ワタシの友人が経営改善/事業再生/事業承継を一手に引き受けている某地域金融機関においては、彼を中心に本部、支店長、支店の担当者が、ケースバイケースで臨機応変に対応するアメーバのような機動的体制を取っていました。

組織全体がコンパクトであり、現場で企業再生や事業承継などの案件が出ると自動的に彼のところに情報が届くしくみができあがっており、この金融機関の規模だと最適な体制と考えられます。

ところが、

この地域金融機関への金融当局のモニタリングでは、「本部と営業店の役割分担を決めて、責任の所在を明確にするよう」指導が入り、やり方を変えることを余儀なくされました。

金融行政サイドのいうことは分からないわけではありませんが、ワタシには教科書的、画一的なものを押し付けているようにしか見えません。

金融機関の立場では監督官庁からいわれればそれに従わざるを得ません。

このような多様性を認めない画一的な金融行政が未だに蔓延り、地域金融機関の創意工夫を妨げていることに腹立たしさを覚えます。

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コメント

  1. 東北の銀行員 より:

    森前長官による「静的な規制から動的な監督へ」の講演から数年、要職にある方々からお話しを伺う限り当局は大きく変わったという認識でおりましたが組織においては未だに検査目線の強い部分というか、温度差があるということでしょうか。

    地域金融機関の中には、小規模で厳しい財務内容ながらも着実にリレバンの歩を進めている銀行も存在しております。

    「形式から実質」が実現されない限りベストプラクティスもあり得ません。真の「金融育成庁」への変化が遂げられることに期待したいと思います。

  2. 長川康一 より:

    現状の当局検査後の改善状況報告は、当初の3段表から7段表となり取り組みへの記載事項が増加しています。当局の①指摘・課題事項、それに対する金融機関の②事実・問題認識、そして③改善・対応策、④担当部署、⑤着手時期、⑥終了時期、⑦報告時までの実施状況となっています。当局はこれでPDCA機能が発揮され改善が進むことを期待していると思います。一方金融機関は指摘された具体的細項目への対応策を列挙し、責任部署を決めスケジュール化し進捗経過を報告すればいいと考えます。
    しかしこのやり方では、細かな指摘事項の対応(規定・マニュアル・研修・会議・施策の実施等)にとどまり、本質的指摘課題の改善や改革にはなかなかつながらない。この現実を変えるべく当局は変わろうとしていると思います。しかし当局は今後もPDCAの手法を取り続けていくように感じます。PDCAは数値目標が設定できる改善課題事項や設備化や規定作成・設置等であれば有効に機能すると思いますが、管理・営業の態勢の在り方の改善や変革をPDCAで対応するのは難しいと思います。
    今日の「余計なお世話だ」の例も、当局がPDCA管理から脱出できない現れではないでしょうか。当局の職員さんはPDCA的に文書で報告させれば形として残せますし指摘もしやすい。
    ただ当局にしても金融機関にしてもPDCAのやり方では、末梢的なことに拘るようになり、本来の本質的指摘事項の課題解決から外れていく傾向が強まります。
    金融機関だけでなく日本社会全般的に、課題解決や目的達成のための手段としたことが目的になってしまう本末転倒の傾向にあるように思えてなりません。